日本人?
スポットライトが当たるところにゆっくり踏み出す感覚。
闇にまぎれていた意識がゆっくりと形作る。
なり続ける携帯。
マジで圏内?
入り込んだ部屋はなんだかキラキラしい、装飾過多なお部屋でした。
無造作にソファーのうえに放られたバックから軽快なメロディーが聞こえる。
「はいはい、まってー」
慌てて携帯を探って確認すれば知らない番号から……着信
いつもだったら絶対にとらないけど、なんか気になる。
おそるおそる通話状態へ。
『こんにちは、牢屋の人』
鈴の音がなるような可愛らしい女の子の声だ。
『私、魔法使いやってます、元日本人です♪』
「はあ……」
何だろう、厄介ごとの予感がします。
なんで番号知ってるんだこの人。
魔法使いって、実際聞くとイタイ気持ちになってくるのは私だけ?
『申し訳ないんだけど、あなた私の代わりにつかまってしまったみたいなのデス。とりあえずごめんなさい』
「今から逃げるとこなんでお構いなく。携帯探し中だったんで見つかって良かったですし」
ってか早く電話切りたい。
領主様の探し人ってあんたか。
『……なんか、ドライな方ですね……』
「アラサーで、しかもトリップ2回目ともなると神経太くないとやっていけませんて」
切っていいですか
『待って!』
そう言えば、彼女は慌てたように早口になった。
『お願いがあるんです!私とあって欲しいんです!あの変態領主に連れ戻される前に!』
「めんどくさいんですが。私はすぐお家に帰れそうなんで帰りたいです」
《えー、もう帰るの?》
うるさいクロさん、ちょっと黙って。
肩の上に器用に座ってたクロさんがつまらなそうにしっぽを振った。
いや、多分しっぽで背中たたいてるでしょ。
『すぐ帰れるなんて羨ましい……私はもう絶対に日本に帰れないっていうのに……』
泣き声ですがられ、嫌々承諾する。
《あきら、どうするの》
「……このまま放り出していくのも気になるし、聞くだけ聞いてみよう」
ため息をついて、ポケットに携帯を突っ込んだ。
さて、逃げますか。
「クロさん、とりあえず外に行こう」
『はーい』
「ここか!美月!」
バン!メキッ
なんか軋んだ音しましたけど……
扉を蹴破ってきたのはおそらく同年代と思われるアジア人顔……いや、日本人(男)だった。
目があって、思わず凝視。
お互い固まった。
「どちら様ですか?」
一瞬早く硬直が解けた私が言った言葉に、彼は息をのんだ
「ま、まさか日本人……か」
「そうですけど」
なんだか、すがるような、期待するような目に顔が引きつった。
「さっき話してた女はどこにいますか」
ほら、やっぱり早く逃げときゃよかった
クロさん、ニヤニヤ笑うな。