快適空間?
「で、どうするって?」
私に投げ飛ばされて毛並みが乱れてるクロさんに囁いた。
武器を持った人たちの包囲網を抜けきれなかった私はあっさりと捕まった。
そりゃ、抵抗なんてできないっしょ
死んだらどうする
ネコ姿のクロさんは一人だけ逃げることもできたんだけど、抱えられて連れ去られる私の後を素直に追ってきてくれた。
牢屋に入れられていてもクロさんがいれば何とかなるかなって思えるから、ついてきてくれて嬉しいんだけど、やっぱり怒っちゃうのはしょうがないでしょ。
「いつでも帰れるんでしょ?」
クロさんの目が泳いだ
……なにを隠してる?
がっしりと首根っこをつかみ、覗き込めば、クロさんはヘラッと笑った。
《こっちの世界の夜になんないと、力つかえなーい……みたいな?》
ぽいっ
《んぎゃん》
ネコなら綺麗に受け身をとれ!
牢屋の窓から見える太陽はやや、傾きかけってとこだ
夜までなら何とか我慢してやろうじゃないか
「……クロさん、私のバックは?」
《兵隊みたいな人が持ってった》
なんですって?!
パッと見た感じ、携帯入ってた!
《だってあきらはどこに行っても持っていくでしょ?》
うん、そうだけどさ……
あー、どうしよ。
《夜になったら抜け出して探しに行こう》
ごめんね?
首をかしげる姿、めっさ可愛い。
誰かー、カメラくださーい。
「で、ここはどんな世界なの?」
《さあ?》
やっぱりこの子頼りになりません……
ママはホントに悲しい……
寝るか。
どうせ夜までは動きとれないんだし。
さっき途中で起こされたから微妙に寝たりないし。
「……はい、クロさんおいで。寝るよ」
抱っこする。
相変わらずぬくぬく。
あー、癒される。
「寝た?」
「……寝たのか?」
さっきから異国の言葉で独り言を言っていた奇妙な娘は、牢に入っているというのに、爆睡し始めた。
隣に立つ同僚の牢番の驚愕の顔は見ものだった。
いや、多分自分も同じ顔していただろう。
今まで牢屋で泣き暮らしたり、暴れたりした者はいても、爆睡なんて初めてのことだ。
しかも独り言が怖い。
後をついて行くようにして自ら牢屋に入って行った黒猫も胡散臭い。
「あんまり関わったらいけない気がする」
「だな。行方不明者との照合が取れ次第沙汰が決まるんだろ?早くいなくなってくれ…怖いから」
「…同感」
見ないように、気にしないように、早く交代の時間になるように祈った。