一緒に
《起きて、あきら!》
緊張、してたはずなのに、熟睡してしまいました。
気づけば、すっかり闇が晴れて、青い空がのぞいてた。
そしてクロさんの切羽詰まったような声に覚醒する。
「--------!!-------------!!」
「え?!」
飛び起きれば周りを武器を担いだヒトに包囲されていた。
殺気立って今にもとびかかってきそうな雰囲気に、顔が引きつる。
一人なら可愛いって思えたと思う。
だって小人さんです。
周りにいるのは。
身長は私の手のひら位。
持ってる武器も小さな槍と弓。
でも、こんなに囲まれるとマジで怖い。
あれ、後ろのほうで構えてるのはもしかして大砲ってやつデスカ?
なんだっけ、昔こんな話読んだ気がする。
そう、確かぐるぐる巻きにされるのよ。
《あきら、一旦森に逃げよう》
クロさんが首で示した方向に大きな森。
私は頷くとゆっくり立ち上がった。
「-------!!-------------------------------!!」
ひい!
一斉に武器を構えちゃったよ!!
なに言ってるかわかんないよ!!
慌てて足を踏み出すけど、ごちゃごちゃいて踏みそうで怖い!
「---!!」
いっ、イタイイタイ!
ちょ、マジで矢が飛んできた。
《あきら!早く》
何とか包囲を抜けて走り出す。
足元にクロさん。
後ろからは小さいけど殺気立って追いかけてくる小人たち。
「ちょっとクロさん!めっちゃ攻撃的だよ」
《こんなに攻撃的な種族だって知らなかったんだ》
クロさんの焦った声に、それはほんとだろうと思えた。
だってクロさんも一生懸命走ってるんだもん。
《だって、夜はみんな寝てた!!》
そりゃそうだろ。
思ったけど言わない。
クロさんも案外うっかりさんです。
「げほげほっ!ちょ、もう走れません……」
アラサーは体力無いって言ったじゃん!
近くの岩に手を着いた。
と、思ったら。
なんか、すり抜けた。
《あきら!?》
最後にクロさんの声が聞こえた。
「うぎゃん!」
べたん!
絶対そんな音がした。
寒い!
「あれ?」
職員玄関だ。
雪がちらちら降ってるのが見える。
「あれ、あきら先輩?なにしてるんですか」
振り返れば、あの日一緒に夜勤をした後輩。
「先に帰ったと思ってました。……風邪ひきますよ、大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫」
何日もあってなかったように感じる後輩は、なんかすごくいい人に見えた。
気が利かないとか、全然動かないとか思っててごめん……
「さ、帰りましょー。明日も勤務ですねー」
後輩に手をかしてもらって立ち上がる。
今朝のお局様の愚痴を言いつつ二人で駐車場に向かう。
「お世話様でした」
お決まりの挨拶。
いつもは煩わしい事が、今日は少し大切に感じた。
車に乗り込んで、カギを回す。
入れっぱなしにしてたCDがなって、ほっとした。
帰ってこれたことに、安堵。
変わらない日常に感謝。
投げ出したかった日常が大切なものに感じた。
少し目頭が熱くなって、視界が滲んだ。
明日の勤務が終わったら、久しぶりに実家に顔を出してみよう。
たまりにたまったレポートは……何とかなるよ、多分ね。
《ねー》
アクセルを踏もうとして、凍りつく。
《ここどこー》
ゆっくり振り返ると、助手席に真っ黒な毛並みのしっぽをぴんと立てたしゃべる黒猫。
「………だめだ、とりあえず帰って寝よう。はい、クロさん危ないから座りなさい」
《はーい》
聞き分けのいいネコを飼い始めたと思えばいいか?
いや、うちのアパート、ペット禁止……。
ま、なんとかなるかー…。
初連載終了させていただきます。
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