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涙色に染まる世界  作者: 博雅
2章 信じるということ
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心の痛み

~小陰~

この時点で私は、人を信じられなくなっていたのかもしれない。

先生は口出しをしない。

親も助けてくれない。

クラスメイトも嫌みばかり言ってくる。

夜音にも裏切られた。

もう何もない…この世に楽しいことも、面白いことも何にも…

こんな世界もう嫌だ…

そう思った時



「リスカ…しなよ?」



小森さんは甘ったるい声で私に告げた。

「…え?」

「だから、いっぺん死ねば?生きてる価値がない、ただの生きるごみ!」

生キテイル価値ガナイ、ゴミ…

「死んでいる死神!あんたはもう終わりよ!あははははは!」

シニガミ…モウ終ワリ?

「だから…これでリスカしてこの世から消えて!」

そう言い放ちカッターが土の上に落とされた。


コノ世カラ消エラレル?

コノ苦痛カラ逃レラレルノ?

逃レタイ逃レタイ逃レタイ…

私はしゃがみこみナイフを手に取った。

「…え?」

小森さんは驚いた顔をした。

夜音も目を見開いている。

「小陰…」


コノ世カラ消エタイ…


私は手首にナイフを持っていき…

ザクッ!

思いっきり深く切った。

赤い血が流れていく…

アアコレデ終ワル…スベテガ…


「きゃぁああああああああああああああ!」

取り巻きたちは叫んだ。

夜音も叫びながら私に駆け寄った。

「小陰ぇ!なんで?なんでなの!しっかりして小陰ぇ!」

何度も何度も名前を呼ばれた。

ついに立っていられなくなり、地面に倒れた。

「小陰!?」

「わ、私…知らないから!小陰が勝手にやったんだから!」

言い捨て、小森さんは走って逃げて行った。

私ハ死ヌンダ…

薄れゆく意識の中、夜音の呼ぶ声だけが私の耳に残っていた。


「その後、すぐに先生が駆けつけて病院に搬送させられたの。4日もの間生死の境をさまよっていたわ。気がついて、両親には悪いけど『あぁ、まだ生きてるんだ』って思って残念だった」

「どうして?」

「また、あんな目に遭いたくないからじゃないかな?あのときの気持ちはもう思い出せない。ただの絶望だけだったから…」

私も天台くんも静かに目を伏せた。

最初に、口を開いたのは天台君だった。

「でも、命が助かった。それでいいんじゃない?」

「全然よくないよ。退院しても学校に行く気にはなれなかった。小森さんのお父さんも謝罪に来たらしいけど、両親は追い返した。小森さん自身も学校に居づらくなったのか転校した」

私は話を切った。2時間目の終了を告げるチャイムが鳴ったからだ。

「授業…これ以上はサボっちゃだめだよね」

「いい。問題ないから話…続けて」

静かな声で天台君は言った。

「でも…」

「いいから!」

有無を言わさない強い声で言った。

真剣に聞いてくれてる…

私はうなずいて話を続けた。

「それから私は人を信じられなくなったの。私が死にそうになったとき夜音は駆け寄ってくれた。でも、水に顔を沈められたり、悪口を言われていた時のことを思うと怖くて…」

手が震えている。

天台君はその手を握ってくれた。

「人を信じたい、もう一度信じてみようと思った時はあった。でも、人を信じようとすると心が拒絶するの!本当にいいの?また夜音みたいに裏切るよって!頭の中で声が聞こえるの!」

天台君は静かに私の話を聞いてくれた。

同情の言葉をかけるのではなく、ただ静かに、黙って聞いてくれた。

私にはそれがなぜか嬉しかった。

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