vol.9【キツすぎる靴 第1話】
言い忘れたけど「DIY」は、販売部と総務部だけで
成り立っているわけではもちろんない。
店舗を一つでも増やすために、朝も夜も走り回ってる営業部はもちろん、
一流ファッションモデルに囲まれて、毎日ウハウハしながら
雑誌のグラビアやポスター撮影をやってる男だらけの宣伝部もあるし、
ウチはセレクトショップじゃないから、店頭に置く商品を制作する、
服飾関係の専門学校や大学を卒業した、
プロのデザイナーさんやパタンナーさんがちゃんといる、
商品制作部、商品開発部だってある。
さらにこのご時世、いわゆる「ハケン」は一人も使っていない。
給料こそ安いが、会社の末端の事務員も販売員も全員「正社員」である。
こうやって言うと、なんだか六本木ヒルズにある会社だと思うでしょう?
でもウチの会社は中目黒という、ちょっと渋い場所にある。
わざわざ家賃の高い六本木にオフィスを構えるよりも
経費の削減になるし、中目黒という場所柄、
商品の搬入なども六本木よりスムーズなんだそうだ。
オフィスビルの一階はショップで、
二階は主に社員の打ち合わせ目的だが、
一般にも開放されているカフェとして営業している。
ちなみにあたしは、通ってた短大が横浜にあったから、
短大進学と同時に東京の下町にあった実家を出て、
日吉にある安いアパートに四年間ずっと住みついてる。
だから通勤も東急東横線一本で超楽チン……って、
言いたいことはそんなんじゃない。
なぜかあたしは、普段は五階の社員食堂でしか会わないような、
営業部、宣伝部、商品制作部、商品開発部、
一階のショップの店長。そして総務部のお局様えみり部長と、
取締役、最後にはもちろん社長という、
そうそうたるメンバーが揃う会議に出席することになってしまった。
そう。宇崎が正式に「DIY」とアポを取り、
来週の金曜日にプレゼンにやってくるというのである。




