vol.76【エゴと愛情の狭間 第4話】
「ありがとう」
「え?」
「エゴとはいえ、あたしをこんなに綺麗にしてくださって」
「ミューナ」
「なんでしょう?」
「ブラジャーも、パンティーもブカブカだったよ」
「だってあれ、キングLサイズですもん」
「Mサイズでいいのに。もしかして、俺のためにずっとあれを?」
「取っておきました。『ミューナ』への最初のギャラはあれですから」
「ミューナ。日吉脱出して、田園調布に家を建てよう。
メイドも家政婦も雇わないで、
二人きりで暮らせる小さな家を。俺、一からまたやるから」
「あたしは、トーヨコ沿線に住むこと自体に飽きました」
「どこに住みたいの?」
「海外」
「じゃあ、ソマリア」
「いやです」
「じゃあ、ニューヨーク」
「テロとか病気とか大丈夫なんでしょうか?」
「大丈夫みたいだよ」
「それなら……あ」
「なに?」
「何年か前に、マイケル・ジャ……」
「あれが住んでたのはニューヨークじゃなくてロス。
デカイ大陸の反対側だ。暴動なんかまず起きないから気にすんな」
あたし達は、裸のままその場で結婚した。
結婚指輪は、部屋にたまたま転がっていた丸いカーテンレール。
婚姻届は出さなかった。日本で籍を入れても意味がない。




