vol.72【代表取締役 小澤喜代彦 第3話】
さっき「お好み焼き 猩々」に行ったとき、小澤店長は、
レパブリカのことはずっと前から知っていて、
数年後、宇崎が企画書をFAXしたとき
嬉しかったと言っていた。それと関係があるのだろうか?
「『DIY』に営業を仕掛けるために、俺はあの人と一度だけ寝た」
小澤社長は、それにものすごく腹を立て、
宇崎の顔をブン殴ったらしい。
そんなことをしなくても、社長はレパブリカのことを
ずっと前から知っていて、宇崎の企画書を心待ちにしていたというのに。
たった一度のあやまちで、仕事一筋だった榊えみりが
「欲求不満のメス」になってしまった。
「『一度だけ』っていうのは表向き。あの人は
俺のことを追いかけてしまったみたいでね。
仕事でミスをするたびに、あの人をこの部屋に呼び出して、
何度も何度も寝た。あの人はそんな俺にハマってしまったみたいで、
給料からどんどん俺に貢いでくれた。
俺も、あの人も社長には絶対にそれを言わなかった。
社長にバレた時点で『MYU―NA』のプロジェクトは
終わってしまうから。そのためだけに
俺は交際しているフリをしてて、
あの人も俺と交際しているフリをしていた。あの人はどんどん病んでいった」
「あの人あの人って……せめて『彼女』って言えないの?
本当にあなたは酷いことをしたんですね」
あたしは、バッグからずっと取っておいたものを出し、宇崎に見せた。
【榊えみり様 抗うつ剤 夕食後一回分】と印刷された薬の袋。
「ここまで……俺はいくつになってもダメ人間だな」
宇崎は、長い話をした。
美大時代の『彼女』について。




