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vol.64【職業に貴賎なし 第2話】

二人の若い店員は黙々と「開店準備」をしていた。



「悪かったな、ミューナ」

「ミューナ?」



二人の店員がその言葉に即座に反応して、

あたしを上から下まで舐めるように見つめた。



「ず、ずいぶんとおキレイになられたんですね……」



もう片方の店員の声を聞いて、

その「ナゾの若い女店員二人」の正体がわかった。


あたしが「ショップ店員」として

はじめてマルキューに出勤した日、

さんざん騒いでいた


「高校を中退したのに、十八を過ぎても女子高生の

フリをしていたニートの金髪ピアス女二人組」だった。


二人とも立派に更生していて、帽子から覗く髪の色は金ではなく

黒のショートヘア。ピアスの穴もふさがっている。


「ミューナ、まあ座って、店長が来るまで店の中一緒に観察しよう」

「う、うん……」


二人は、相変わらず黙々と「開店準備」を続けていた。

制服も帽子もデザインは変わっていないが、

洗濯する時に漂白剤を使って、

きれいにアイロン掛けしているのであろう。

翔君のように「汚れ」が一切ない。


ぶつかった方は黙々と床にモップをかけ、

もう一人は黙々とカウンターや椅子の拭き掃除をしている。

内装は全く変わっていなかった。

大きな鉄板で焼くスタイルも、カウンター式も。

椅子も増えてもいないし減ってもいない。キッカリ六つ。


ただ、全てがピカピカだ。天井も煙で汚れていない。

厨房を覗くと、真新しい業務用の「空気清浄機」があった。


カウンターの上には、なにも置かれていない。

マヨネーズも、青のりも、タレの容器も、灰皿も、割り箸すらもない。


(まあ、開店直前に置くんだろう)


と思ってクルリと後ろを振り向くと、

相変わらず翔君のバンドのポスターが貼ってあったが、

バンド名が「RITTER」から

「VIVA! VIVA! MASTERPIECE」

に変わっていた。「マスターピース」の意味は確か「傑作」


翔君とリズム隊の二人のルックスはさほど変わっていなかったが、

衣装がガラリと変わっていた。

穴の開いたボロボロのジーンズを履いていたはずの三人が、

モッズ系の黒く細いスーツを着ていて、

ネクタイの代わりに原色の「それっぽい開襟シャツ」の襟をはだけていた。


ボーカルのミワさんは相変わらず目立っていて美人だったが

「ロックっぽい」格好ではなく、

アメリカの女性シンガーが着るような、

ノースリーブに銀色、くるぶし丈の高級そうなスリット入りドレス。

ボディラインがバッチリわかる。


手にはなぜか「羽根つきピンクのジュリセン」

その、一見ちぐはぐで、ダサかっこいい感じが

「VIVA! VIVA! MASTERPIECE ボーカル=ミワ」

によく似合っていた。


(ミワさんってやっぱりスタイルいいなあ……)


と思っていたらポスターの横に、なぜか安っぽい

白黒のチラシが二枚貼られていた。

よくアパートのポストに勝手に入っている、宅配AVチラシのようだ。


なぜ? と思い、席を立って近くに行きマジマジと見たら、

やっぱりAVのチラシ。二枚とも「レパブリカ」ではない、

どう見ても安物の際どいショーツでギリギリ股間を隠していたが、

女優の顔を見た瞬間にコメント不能になった。


芸名こそ違っていたが、上があゆみで、下がカンナだ……。

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