vol.61【代表取締役 高木みうな 第3話】
「わかりましたよ、高木社長」
「元社長、二つ聞きたいことがあります」
「なんだね?」
「榊えみりは、ここに来ましたか?」
「来ていない」
「でしょうね。あの人は『死んでお詫び』
するようなタマではありませんから」
「あと一つはなんだね?」
「『ゲスト』はこのビルのどこにいるんでしょう?」
「宇崎君かね?」
「いいえ『ゲスト』です」
「そんなあいまいな言い方では、ここの社長は勤まらんよ」
「教えてください、元社長」
「このビルのどこかにいる。高木君。
キミが社長なら全ての階の全ての部屋を探したまえ」
「わかりました。その前にあなたを、
安全な場所に移動させる任務があります。この会社の社長として」
あたしは「元社長」をおんぶして、一階の非常口まで連れて行った。
元社長は非常口の手前で気の抜けたように座り込んだまま。
そっと外を覗くと、しつこい芸能レポーター達が大量に先回りしていた。
すぐに「元社長」から離れた場所に移動し、携帯から一一九番した。
「火事ですか? 救急ですか?」
「救急です」
「住所をお願いいたします」
「中目黒の『DIY』一階非常口内側です」
「患者の名前と状態は?」
「オザワキヨヒコという名前の、重度の患者がおります。
放心状態で、自力では立つことすら出来ない状態です」
「あなたのお名前と、連絡先を」
「タカギミウナです。患者を無事保護したら、
すぐにこちらまでご連絡を。090―」
すぐにサイレンの音が近づいてきて、携帯に
「患者を無事保護しました」という連絡が入った。
「社長 高木みうな」に残された仕事はあと一つ。
このオフィスビルのどこかにいる「ゲスト」を探すことだ。




