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vol.55【代表取締役 宇崎洋平 第2話】

なぜなら、ショップ店員になってから「特別な商品」を

求めてやってくる客に

こういう態度を取らなければいけないのに、

毎回歯がゆい思いをしていたからだ。


「あのう……こういうデザインで

『サニタリーショーツ』は、さすがにないですよねえ?」


マルキューにおいては、レパブリカのコーナーは

もはや畳一畳程度。サニタリーショーツも置きたいが、

いかんせんスペースがないし、商品そのものが入ってこない。


「申し訳ございません。当店では扱っていないのですが

本店に行けばございます。『レパブリカ』の

サニタリーショーツ、試作品使ってますけど、すごく機能的ですよ」


そう営業トークして本店の地図が書いてある

フライヤーを差し出すと、客は必ずこう言う。


「めんどくさ、こんなところにあるんだあ……」

「ま、まあ、同じ渋谷ですし。

ここから歩いて五分くらいですから」

「この界隈にあるお店は、ちょっとね。

マルキューの中でサニタリーショーツ売ってる店ないかしら?」


マルキューに来るお客さんは、入っている店は

全部「系列店」に見えるのであろう。


そういう時、あたしはマルキューに入っている

「ライバル」の下着専門店の名前を出すしかなかった。


はじめて宇崎に会った日、プレゼントとして貰った

ベージュのサニタリーショーツを、

あたしは月のものが来るたびに愛用していた。


あのときの宇崎は「それは試作品」だと言っていたが、

これだけ使い勝手がいいサニタリーショーツは他にない。

商品の性質上前面に押し出して売るものではないけれど、

ここでも売ればいいのに。



二十五の誕生日を迎えたら、あたしは迷わず

「DIY」を辞めようと思っていた。

会社もあたしの辞表を素直に受け取るだろう。


「ミューナ」にはもう何の価値もないし

「トーヨコミューナ」もすでに飽きられている。


この間の合コンで知り合った某有名男性誌のモデルから、

熱烈なラブコールを受けた。


そのモデルとは、好きでもないのに何回かデートした。


好きでもないのに何回もキスをした。


ただ、最後の一線だけは越えられなかった。

素直に「私はバージン」だと打ち明けると、

そのモデルは笑顔でこう言った。


「ミューナが『DIY』を辞めて、モデルも辞めたら、結婚しよう」

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