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vol.54【代表取締役 宇崎洋平 第1話】

えみり部長を追いつめてしまったのは、あたしだ。


あたしは心を入れ替えて、週四回の勤務だけではなく、

ジムにも再び通うようになった。

「トーヨコミューナ」に

テレビや雑誌の取材が入れば、真面目に答えた。


二十五の誕生日が間近に迫っていた。


その間に会社全体の売り上げは徐々に持ち直し、

あたしを「トーヨコミューナ」と呼ぶ人間はいなくなり

「お好み焼き 猩々」にも入店を許された。


ただ、あれから二年経ってもあたしを許してくれない人間が四人いる。


えみり部長、麻巳子、翔君、そして宇崎。


部長はマルキューに巡回しても、

愛店長とカンナだけに話しかけ、あたしのことは無視。


麻巳子とは音信不通。こっちから電話やメールをしても、

返事が返ってこない。さすがに怪しいので、

ジムにだけ真面目に通い、エステ通いは勝手にやめていた。


翔君は「RITTER」で見事にメジャーデビューを果たし

「お好み焼き 猩々」の全ての権利を、たまたま客として来た

「大企業にリストラされた、お好み焼き大好き酔っ払いおじさん」

に譲ったそうだ。

店のオーナーが代わる頃には「RITTER」は

すでにレコード会社と契約し、

デビューを目前に控えていた。


翔君が「お好み焼き 猩々」を経営していたのは、

全てバンドの維持費のためだという。


その話は「RITTER」がゲストとして出演した、

某トーク番組で、翔君の口から聞いた。

それ以来「お好み焼き 猩々」には全く行っていない。


宇崎に至っては「ミューナ」のプロデュースを

他の人間に任せっきりにしている上

「本店」ばかりを守っていて、以前のような

ペースで商品を搬入しなくなった。


あたしにムリヤリシンデレラの靴を履かせ、

綺麗にしてくれたのは宇崎なのに。


生まれてはじめて周囲からチヤホヤされたことによって、

すっかり調子に乗ってしまったあたしは、宇崎への恩を忘れていた。


プロの「モデル」でもなく、プロの「ショップ店員」でもない、

ただの自己嫌悪の固まりと化した

二十四のあたしは、未だにバージン。


会社の上層部からも


「一応『DIY』専属ってことにしておくけど、

勝手にいろんな媒体に出ていいよ」と言われ、

給料を半分以下に減らされた。


腹いせに、いろんなファッション誌やモデル事務所に、

アパートに大量にある宣材写真を送ったら、

面白いほど大量のオファーが来た。


モデルとしてのギャラも専属の頃と比べてケタ違いに増えた。


一流ファッション雑誌の撮影で有名モデルとたくさん知り合い、

男モデルや女モデルの知り合いが増え、

旅行や合コンも何回もしたが、はじめての男は宇崎しか考えられない。

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