vol.44【折れた広告塔 第5話】
「麻巳子はさ、中学からのマブだけど、
エステで働き始めたとたんに変わっちゃったね。
外見だけは綺麗になったけど、
ただの五千円チケットの売り子マシーンになっちゃった」
「みうなちゃん大丈夫?
ああいう奴らが勧誘してるエステの広告塔なんかやってて」
「そうなのよー。それが唯一の心配。宇崎さんも頭いいと思うけど、
なんか手短で済ましてるよね。『GET★CUTE』なんかじゃなくて、
もっと大手のエステ紹介しろっての」
「なんかきな臭いよな」
「まあ、大手のエステも、会社のカラーは
さほど変わらないって麻巳子に聞いたけど……」
「そうなの? ちゃんと宇崎に相談した方がいいよ。
みうなちゃんそれだけ綺麗になったんだし、
ジムにも通ってるんでしょ?『エステはもういいです』とか言えないの?」
「それ、あたし言える立場じゃないから。まあ、相談はしてみるけど」
「みうなちゃん」
「なに?」
「麻巳子と変わらないね。トーヨコミューナさん」
「翔君までそんなこと言うんだ……もう帰る。おあいそして」
「タダでいいよ」
「え! これだけ呑んで食べたのに……」
「タダでいい。その代わり、
この店には二度と来ないでくれる? トーヨコミューナさん」
トーヨコミューナさん。
翔君まであたしをそんな風に見ていたとは。
帰るしかなかった。それでもあたしは、
「客からは、ちゃんと金を受け取りな!」
と捨てゼリフを吐いて、財布に入っていた
全ての「札」をカウンターに置いて来てやった。
女には嘲笑され、男には「オカズ」にされるのが今のあたし。
もうイヤだ。




