vol.43【折れた広告塔 第4話】
麻巳子は、翔君と付き合いはじめた頃から
「RITTER」のライブにちょくちょく通うようになり、
唯一の女性メンバーのミワと親しくなったらしい。
翔君を含む他のメンバーは、麻巳子とミワは
普通に仲がいいと思っていた。
しかし「RITTER」が主催するライブイベントで、
ギャルバンばかりを集めて対バンしたときに事件は起こった。
「麻巳子ってホント空気読めねえ。そのライブ終わった後さ、
あいつ打ち上げについて来たんだよ。
まああいつは、何回も『RITTER』観に来てくれてるし、
彼女だしと思って、別にいいかと思って参加させたのが悪かった」
麻巳子は、その場にいた女全員に
「三時間たっぷりエステの初期体験ができる」という触れ込みの
五千円のチケットを、まるで札束のように頭上に掲げて
ペラペラとやり、全員に酒が入っていることをいいことに
「買って買って~」と居酒屋で騒ぎまくったという。
「そしたら、ミワがキレちゃってさ。
いきなり立ち上がって『テメエ、ウゼーんだよ!』って、
麻巳子をボコッたんだ」
麻巳子は、ミワと親しくなったわけでもなんでもなく、
ただ、エステの勧誘をしていただけ。
ミワは、ライブに来るたびに勧誘の話しかしない
麻巳子に痺れを切らしていたという。
「そしたら麻巳子、その場にいた女全員に『ざけんな!』
って言われてボコボコにされて居酒屋追い出された。
ギャルバンばっかりだったけど、バンドやってる女なんて、
酒一杯飲んだらすぐ凶暴になるし。俺も言ってやったよ」
「なんて?」
「『ここの居酒屋はもう一つの家みたいなもんだし、
対バンの奴らも“戦友”だしな。どっちもおまえより付き合い長いの!
そういう大切な仲間を、勝手に飯の種にすんなバカヤロめ』
で、一発ボコってズィ・END」
「はーん」
あたしは麻巳子の行動に呆れ返っていた。
麻巳子とは、確かに付き合い長いけど、
翔君の言っていることのほうが正しい。
あたしが「GET★CUTE」の広告塔になったにもかかわらず、
麻巳子からは電話やメールで
「みうなの知り合いのモデルで誰かいない?」
と、しつこく連絡がきていた。もちろん無視していた。
ミワさんといい、今のあたしといい、
相手を考えずによくそんな図々しいマネができるもんだ。




