vol.39【蔑みのニックネーム 第5話】
出版社から中目黒の本社に、その雑誌が何冊か届いた。
えみり部長がマルキューに巡回にやってきた時、
タダでもらったが読む気がしなかった。
しかし、電車で渋谷から日吉に帰る時、あまりにも暇だったため、
ついつい自分の記事を読んでしまった。タイトルは
【本誌独占! トーヨコミューナ4Pインタビュー】
記事はたったの四ページ。
メイン写真は、はじめての宣材写真と、
最新の宣材写真それぞれの別ポーズ、
プロのカメラマンが撮った写真だけど、これではただの使い回しだ。
さらに、写真の下に【使用前】→【使用後】なんて書いてある。
取材時の写真は二センチ四方で一枚しか使われていない。
なによりムカついたのが、見開きページにデカデカと
踊っているふざけたキャッチコピー。
「トーヨコ沿線に住めばミューナみたいにカワイクなれるぞっっ!」
電車が日吉に着いたとき、あたしは雑誌を
アパートの途中の公園にあるゴミ箱に捨てた。
ガッカリした。
いくら綺麗になっても、あたしの扱いは
デブでブスな頃とちっとも変わっていない。
♪ピーポピーポピポピポポポポ~♪
携帯が鳴った。えみり部長からだ。
「ミューナ、雑誌読んだ?」
「読みましたよ」
「あれ、どうせ捨てたんでしょ?」
「もちろんですよ! 頭にくる……」
「拾ってきなさい!」
「は?」
「いいから拾ってこい! 今のあんたのイメージは第三者から観たら、
使用前使用後って感じだし、トーヨコ沿線に住めば
ミューナみたいにカワイクなれるぞっっ! って感じだし、
トーヨコミューナなの!」
ガチャ!
すぐさま公園に向かって走り、ゴミ箱を漁って捨てた雑誌を
拾おうとしたが、ない。ふとベンチを見ると、
気持ち良さそうに寝ているおじさんが、捨てた雑誌を枕にしていた。
シュッ!
あたしは、雑誌をおじさんの頭から引っこ抜き、
おじさんの罵声を背中に浴びながら全速力でアパートに戻った。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
あたしの記事には、おじさんのものと思われる、
出したてホヤホヤの、
ツーンと鼻をつく「白い液体」がべったりとついていた。




