vol.38【蔑みのニックネーム 第4話】
インタビューが終わり、同行のカメラマンがその場で写真を撮った。
「いいんですか? こんななにもないところで写真撮影なんかして?」
「はい。大変貴重なお話を伺えましたし、インタビューのお時間は
一時間しかいただいていないので。スタジオで写真を撮りたいのは
山々なんですけど、時間が迫っておりますし」
「貴重な話? ただの素人時代のぶっちゃけトークですよ?
こんなんが記事になっていいんですか?」
「ぜんっぜん大丈夫です!」
写真を撮られまくっている間、あたしは若いライターが
こっそり手帳に書いた単語をこの目でしっかり見た。
【トーヨコミューナ】
『ミューナ』の前の『トーヨコ』という文字。それで全てを察した。
(ここは中目黒。働いてるのは渋谷。短大は横浜。
遊んでたのは中華街。住んでるのは日吉。
麻巳子のエステは自由が丘。住みたい街は田園調布
『トーヨコ沿線で青春を過ごした女』でムリヤリまとめたいんだろうな。
この記事が発表されたらウザイギャルちゃん達に
『トーヨコミューナ』って呼ばれるんだろうな。
安易だな。ちっきしょうめ)
その考えはズバリ当たっていた。
あたしの記事が載った雑誌が発売されたとたん、
店に来る客が全員あたしのことを「トーヨコミューナ」とあだ名した。
気に入らなかったが「トーヨコミューナ」と呼ばれても、
あたしは「カリスマモデル兼ショップ店員」として、笑顔で働き続けた。




