vol.34【お得意様は苦労人 第4話】
小声でこっそり言ってるつもりだろうけど、
途中から大声になってるし、
パワーポイントやアクセスもセットで入ってる
『オフィス』って知ってるか?
『オフィス』を全部使いこなせないと事務員になんてなれないし
「DIY」は給料こそ安いけど、販売員も事務員も全員正社員だ!
あたしや愛店長やあゆみやカンナの陰口を叩きながら、
携帯のカメラでフラッシュ機能を使ってバンバンバンバン
あたしの写真を撮る女子高生もいる。
全員に共通しているのは、店の敷地内には絶対に、
誰一人として入ってこないところ。
中には、毎日のように集団でやって来て、
その内の一人を、ボン! と敷地内に突き飛ばし、
あたしたちに「いらっしゃいませ」と言わせては、
即、集団に逃げ帰り、
「お前スゲー、勇者~。よーし、今度は誰がやる?
じゃあ、あんたに決定! せーのっ!」
ボン!
「いらっしゃいませ」
「スゲー! 勇者~! よーし、今度は誰……」
という「なにが楽しいんだか全く理解できない
頭の悪いハタ迷惑な遊び」を繰り返す悪質なグループもいた。
こうして、あたしが販売員になってからしばらくの間
「DIY! 渋谷09店」の売り上げは低迷した。
同時に、同じフロアの他店から、
「おたくに集まってくる野次馬のせいで、客が来ない売り上げ伸びない」
というクレームも毎日来て、
あたし達四人は毎日肩身の狭い思いをしていた。
この異常事態を重く見た会社側は、幸運の女神として、
総務部のえみり部長を応援販売員として一週間派遣してくれた。
「DIY」のパンツスーツに身を包んだえみり部長からは、
ものすごいオーラと貫録がにじみ出ていた。
常時七十人はたむろしている女子高生達も、
えみり部長の存在感と目力だけで、次第に数が減っていった。
悪質なイタズラを繰り返していた、手に負えないあのグループも、
えみり部長を目の前にすると、無条件に白旗を上げるしかないようだ。
いつものように、ボン! とやると、すかさずえみり部長があたしの前に出て、
「いらっしゃいませ。お客様、今日はなにかお探しで?」
「あ……あたしたちは、ミュー」
「ニュー? あら、ありがとうございます。
本日入荷の新作をお買い求めにいらしたのですね?」
「いや、そうじゃなくってミューナを……」
「ミューナ? ミューナは売り物ではございませんよ」
えみり部長がニヤリと微笑を浮かべながら言うと、
女子高生達はなにも言えずに去ってゆく。
こうして、たった一週間で「DIY! 渋谷09店」に
動物園感覚で来るハタ迷惑な女子高生は一人もいなくなった。
「よしよし、邪魔なギャルちゃん達が一匹もいなくなった。
でも、これで『DIY』の売り上げが下がったら、
あたし左遷されちゃうかも。ハハハハハ!」
えみり部長はそう嘯いていたが、逆にギャルちゃん達の間で
『DIY』や『レパブリカ』により箔がついたらしく、
バーゲンの時期でもないのに、売り上げが毎日面白いほど伸びるようになった。
「あたしも将来、ミューナやえみりさんのような
カリスマ店員になりたいです!」
新規客は、ほぼ全員目をキラキラさせてこう言う。
そんな客の表情を見るたびに、あたしは複雑な気持ちになっていた。
(えみり部長とあたしかあ……えみり部長の方がどう見ても綺麗だし、
カッコいいもんね。そりゃ好きになるよ。宇崎さんも)




