vol.32【お得意様は苦労人 第2話】
二人が店を出て行ったあと、あゆみとカンナが小声で話しかけてきた。
「どお? ミューナ、勉強になったっしょ?」
「勉強になったもなにも、ああいうのは
十八になった途端に苦労するタイプっしょ?」
「なんだ、わかってるじゃんミューナ」
ぱっしーん! ぱっこーん!
あゆみとカンナは、あたしの背中を交互におもいっきり叩いた。
「ミューナにはぶっちゃけるけどさぁ、
あたしら二人とも学歴高卒ってことになってるけど、
実は同じ高校を同じ日に中退してんだぁ」
「え!」
「しーっ! ちゃんと高校を卒業してるのは愛店長だけ!」
「それに、あの二人組よく来るけど、両方髪の毛金髪だったじゃん」
「っていうか、二人ともしっかりピアスまでしてたけど。まさかさっきのも……」
「そう。高校中退組。しかも二人とも十八なんてとっくに過ぎてる」
「職業は今流行りの『ニート』カムフラージュで制服着てるだけ」
「うそっ! 超苦労人じゃん!」
「ウチのお得意様って、ああいうのばっかだから。
絡みづらいのはこっちだっての。
でも『お得意様』を怒らせちゃダメよん。あ、いらっしゃいませー!」
(う~ん、さっきみんな無愛想だったのは
「品出し」が一番忙しい仕事だったせいか。
それにしても、愛店長も、あゆみもカンナもプロだなあ……)
あたしも高校生の頃は、麻巳子と二人でつるんで
ああやって世の中をナメていた。三人ともさっきの二人組の
ような高校時代を経験した上で、ここのショップ店員をやっている。
愛店長、あゆみ、カンナ。誰の人生もバカにすることなどできない。
(でもさっきの二人、あたしらが高校生やってた頃よりタチ悪い。
二十二歳か。歳取ったな、あたしも)
負けてはいられない。ウチの会社の基本ポリシーは「フレンドリー」だが、
総務部の一緒に温泉に行ってぬるま湯に浸かるような「フレンドリー」と、
販売部の一緒に戦場に行って共に戦うような「フレンドリー」とでは、
明らかに「フレンドリー」の質が違う。
その日の売り上げは、愛店長四十七万。あゆみ三十九万。
カンナ三十六万。あたしが七十八万。
全員ノルマをクリアしたうえ、愛店長の言うとおり、
あたしの売り上げがダントツだった。




