vol.30【あたしはミューナ 第5話】
「ミーティング始めるわよ~」
あたし達三人は、愛店長の元に駆け寄った。
愛店長があたし達に昨日の売り上げと、今日の売上目標を告げた。
「昨日の売り上げは、あたしが三十四万。あゆみが二十八万。
カンナが二十一万。カンナ、ここんとこ調子悪いねえ?」
「申し訳ございません」
「今日の売り上げ目標。あたし四十万。あゆみ三十五万。
カンナも三十五万。ミューナ五十五万」
「え!」
「大丈夫よ。ミューナはウチの広告塔なんだし、
話題性もあるから、初日であゆみもカンナも抜ける。
それに、初仕事であれだけできれば、五十五万なんてすぐよ」
愛店長はそう言って笑った。
忙しい中、あたしの仕事っぷりをちゃんと見ていたのか……。
「もちろん、あゆみもカンナも、初仕事のミューナに
初日でいきなり売り上げを抜かれないように、
二人とも、六十万以上売ってやるつもりで、気合を入れること!」
「はいっ!」
「あ」
「ミューナ、返事!」
「は、はいっ!」
(すごっ! 自衛隊みたいだ、今日は気合い入れなきゃ……)
♪チロリンチロリンチロリ~ン。
いきなり、マルキュー全体に全く気合の入っていないチャイムが鳴り響いた。
「みんないつものように。ミューナ、あれは開店時間三分前の合図よ。
開店から五分間は、あそこに立って手を前に組んで、
お客様が通ったら『いらっしゃいませ』って言ってお辞儀して。
一歩も動いちゃダメだし『いらっしゃいませ』以外の言葉は
決して言わないように。笑顔でヨロシク」
「はいっ!」
「あ、そんなに気合い入れすぎないでいいから。
一日中ピンヒールで立ってるのって結構しんどいし。
64%ぐらいのさじ加減でお願いね」
「64%って……微妙だなあ」




