vol.29【あたしはミューナ 第4話】
あたしは店内に足を踏み入れ、三人に向かって挨拶をした。
「あ……先日はどうも。今日から異動になりました、高木です」
「愛です」
「あゆみです」
「カンナです」
三人は、あたしに顔だけ向け、ごく短く挨拶し、仕事に戻った。
(う~ん、うまくやっていけるのかなぁ?)
ボーっとしていると、愛店長に怒鳴られた。
「なに突っ立ってんの!『レパブリカ』のコーナーの品出しして! 早く!」
「ああ、はい」
ドスン!
愛店長は音を立てて、目の前に『レパブリカ』の商品が入っているダンボールを置いた。
「あのぅ、愛店長。あたし販売の仕事はじめてで……どういう風に品出しすればいいのか教えていただけますでしょうか?」
「品出しの仕事は、はじめてでも誰にだってできる! 一番目立つところに、売れそうな商品を置いて、あとはテキトーに。開店時間の十分前までには終わらせて!」
はじめて販売の経験をするあたしに対して、なにも教えてくれないの? しかも、ぶしつけな言い方だなあ……と思ったが、あたしは言われるままにダンボールを「レパブリカ」のコーナーに運び、はじめての作業をした。
ダンボールを開けた。案の定、どの下着も全部ド派手。
どれが売れ筋商品なのかなんて、見当もつかない。
混乱したままダンボールをあさっていると、
今、身につけているのと全く同じデザインの下着の上下があった。
(そうか! これをマネキンに着せればいいんだ!
広告写真も、同じ下着なんだし。客に売るとき、一番話題になるし)
あたしは、勘と感覚だけで「レパブリカ」の品出し作業をした。
(一番上の棚には、暖色系の柄つきの商品を置こう。
オレンジ、赤、黄色、薄めのピンク、薄めの紫……
あ、あれあるかな、あった! 水色のハートのアップリケ付き!
うわっ! 同じの十枚ぐらいある。これが『売れ筋』かあ、
とりあえず四枚ぐらい置いて……ちょっとうるさいな、
アクセントに緑でも一つ置いておこう)
(真ん中の棚には寒色系と。水色のアレをしつこく置いて、
青、オリーブ、白、深緑、濃い目の紫、緑、黄緑……一応、赤一つと)
(一番下には、地味なの。って地味な下着一つも無い
……うわ、タイムリミットまであと五分! ええい、テキトーに置いてしまえ~)
開店時間十分前、あたしはまだ商品の残っている
ダンボールをバックヤードに片付けた。




