vol.23【名前が変わった日 第2話】
七階の宣伝部の撮影スタジオに着くと、
すでに専属カメラマンが到着していて、
撮影の準備もできていた。宇崎さんの姿もある。
「ああ、榊部長、みうなさん、おはようございます。
みうなさん、時間がありません。すぐにメイク室へ」
メイク室には、すでに専属のメイクさんと
スタイリストさんが到着していた。
あたしはメガネを外され、
今までにしたこともないような派手なメイクをされた。
「これ、今日の衣装です」
スタイリストが、あたしに衣装を手渡した。
(……。)
「レパブリカ」に見学に行ったとき、ディスプレイに飾ってあった、
水色に赤いハートのアップリケのついた、
一番カワイくて目立つブラジャーとパンティ。
しかも、あたしの体のサイズに合わせてキングLサイズに仕立ててある。
「あ、あのぅ、マジでこれに着替えるんですか?」
「はい。なにか?」
「あー、ちょっと恥ずかしいことなんですけど」
「どうしました?」
「あたし、ワキ毛と、アンダーヘア、ずっと処理してなくてですね……」
「ずっと? 三ヶ月ぐらいですか?」
「や、少なく見積もって半年以上……」
「あらっ! それは大変!」
とたんにあたしは、メイク室にいたすべての人間に囲まれ、
素っ裸にされて仰向けにされた挙句、
ワキ毛、アンダーヘア、へそ毛、スネ毛……
とにかく全身のムダ毛というムダ毛を、
毛抜きで抜かれる&カミソリで剃られるという、
(どんな罰ゲームだよ)
と思わずにはいられない辱めを受けた。しかも、
「うわっ! この人スネ毛ボーボー!」
「乳輪にまで毛が生えてる!」
「女でこんなにワキ毛伸ばしてる人見たことないよぉ」
「アンダーヘア長すぎ! 抜いてる暇ないから、ハサミで切るわよ!」
「へそ毛も濃い! 本当にこの人がモデルになるの? 信じられなーい!」
という、罵詈雑言のオマケつきで。
数人で寄ってたかって、毛抜きでワキ毛とアンダーヘア、
へそ毛をバンバン抜かれている最中、そのあまりの痛さに、
「いだ! いだだだだだ!」
と思わず大声を出してしまったが、
「今まで、女として当然のことを、サボってきた罰です!
あなたはモデルになるんですから、美肌と痩身だけでなく、
ムダ毛にも気を配ってください!」
と誰かに言われたときには、
「はい」
と素直に謝った。
メイク室にいたすべての人間が、女だったことが
せめてもの救いだったが、床に落ちた毛を、
スタイリストの助手が、ホウキとちり取りで渋々かき集めていて、
それが「美容院に行って、ロングヘアの女性が
ショートカットにしたときぐらいの量」に見えたときは、
(今までのあたしって、女として最悪だったんだ……)
と再び素直に反省した。




