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vol.11【キツすぎる靴 第3話】

プレゼンの日がやってきた。


入社三年目にして、あたしははじめてオフィスビルの最上階にある

大会議室に足を踏み入れた。

入社してからずっと、入ることを固く禁じられていた場所。


開放感のある大きな窓、こげ茶色の長い机が

カタカナのコの字型に並べられていて、

部屋の真ん中にはプロジェクターが置いてあり、

その先にはそれを映し出すスクリーン、ホワイトボードなどがある。


会議室の中には、まだ誰もいない。

勝手に進もうとすると、受付にいた女に止められた。


「部署と、お名前をお願いいたします」

「そ、総務部の高木みうなです……」


受付の女は、A4サイズの書類をパラパラとめくり

「総務部 高木みうな」の欄に○印をつけると、

黙ってあたしの名前が書いてあるプラスチックの名札を差し出した。


「プレゼン中は、ずっとその名札を左胸につけて、

終了後は速やかにこちらへお戻しください」


あたしは言われたとおりにすると、自分の席を探した。

全ての席にはすでに書類が置かれており、

机の手前には名前が書いてある。

どうせあたしの席なんて下座だろうと、

受付から近いところをウロチョロしたが、なかなか見つからない。


「あのー、高木さん?」


あたしの様子に見かねたのか、受付の女が半笑いで声をかけてきた。


「高木さんの席は、こちらです」


後についていくと、なんとその女は、

スクリーンに最も近い窓側の席にあたしを連れて行くではないか。

こんな上座の席なんて、社長か取締役が座るとこだよね……と思ったが、


そこにはしっかり「総務部 高木みうな」と書かれていた。


心臓がバクバクしたが、できるだけ平静を装ってその席に座った。

左側は司会者のブースになっていて、

右隣の席にはしっかり社長の名前が書いてある。


(な、なにが起こるっての?)


プレゼンの時間が近づくにつれて、どんどん人が集まってくる。

社長もやってきて、無言であたしの隣に腰を下ろす。

極度の緊張を隠すために、あたしは目の前にある書類を見ようとした。

すると右から声が聞こえた。


「君ィ、プレゼンが始まるまでは、

書類には目を通してはいけないんだよ。それくらい常識だろう」


声の主は、もちろん社長だ。


「あ、はい、すみませんでした」


あたしは真っ赤になって書類を元に戻した。

ふと前を見ると、目の前にえみり部長が座っているのに気づいた。

えみり部長は、あたしと目が合うと

「なにもかも知ってるわよ」といった表情で、ニヤリと笑った。

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