vol.10【キツすぎる靴 第2話】
宇崎は最初「DIY」総務部に企画書をFAXで送ったそうだ。
しかし、こういった営業目的の企画書は、毎日山のように届くので、
あたしは宇崎のFAXに気づかなかった。
その企画書を総務部の誰かがコピーして、
他の企画書とともに、いつものように各部署の担当者に回した。
内部の反応はすこぶる良かったらしい。
まず「レパブリカ」の商品を紹介しているホームページを見た、
商品制作部のデザイナーさん達が、
ページに掲載されている商品を気に入り、
商品制作部で「レパブリカ」のことが話題になったという。
その後、その噂を聞いた宣伝部の人間も気に入り、
営業部の人間も気に入り……と、話はトントン拍子に進み、
宇崎はまんまとプレゼンにまでこぎつけたというわけだ。
あたしはそのことを、従業員全員に回ってくる回覧板ではじめて知った。
プレゼンに出席する各部署の社員名簿の一番下に、
「総務部 高木 みうな」
と書いてあったのを見たあたしは目が点になり、
即座にえみり部長のデスクに駆け寄った。
「えみり部長、あたしもこのプレゼンに出席するんですか?」
「そうみたいねぇ。なぜなんでしょうねぇ? きっと、毎日ずっとパソコンにかじり付いて、お尻が重くなってるから、たまにはプレゼンにでも出ておいでよ、って意味じゃない?」
「そんな、まさかぁ」
「冗談よ。高木さん、あなたこの『レパブリカ』の
宇崎さんって方とお知り合いなんですってね」
「え、どうしてそれを?」
「企画書の中になぜか
『総務部の高木様を、ぜひプレゼンに参加させてください』
って書いてあったのよ。あんたもよくやったわね。
あんなイイ男とどこで知り合ったのよ?」
「いやあ、それはちょっと……あのぅ」
「いいわよ。わざわざ言わなくても。
とにかく、宇崎氏はあなたのことを相当見込んでるらしいの。
わかったわね? 必ず出席するのよ」
「は、はい……」
学生時代に、気の強いいじめられっことして身に付けた口の悪さが、
本格的に役立つときがやってきたと思った。
あたしははりきってプレゼンの日を指折り数えていた。
しかし、宇崎に見込まれたのは、口の悪さではないらしい。
あたしがなぜか「シンデレラの靴」を両方ムリヤリ
履かされる立場に置かれるとは、このとき誰が予想していたであろうか。




