第九話 突然の別れ
とんとんとんっ。とんとんっ。
二つの足音が、階段の方から聞こえてきた。
あたしは、くるりと振り向き――――――。
「神奈たち、遅す――――ってゎわっっ!」
いきなり、神奈が飛びついてきた。お前はカエルかっ。
「いやー、ごめんごめん。拓のせいで先生にちょっと捕まえられちゃってさっ。」
「えぇ!?それ、俺のせいなの!?もとはといえ・・・っぐは!!」
神奈の肘鉄が入り、拓の言葉は途中でとぎれた。
・・・拓、ご愁傷さま。
けど、あたしは神奈ガエルを引き剥がすのに精一杯だ。
「あらぁ。拓、死んじゃったみたい☆
誰がやったのかなぁ?ささ、帰ろ、帰ろ!」
絶対反省してないな、こいつは。明らかに、それ嘘だろう。
語尾に☆マークつけてそんなこという人、神奈ぐらいだろう。
・・・あ、やっと神奈がはがれた。
「拓・・・。ご愁傷さま!明日、誰かにみつけてもらって。
大丈夫、校門でるまでは拓のこと忘れないから!」
しかし、神奈に便乗。あぁ、かわいそうな拓っ☆
「お前ら友達だろ!おいてくなよっ!ひどいよ!」
拓が復活した。我が幼なじみながら、このタフさには感心するばかりである。
「あ、拓。おかえり。」
「俺の生死軽すぎだろ!?」
・・・ま、そんな会話をしながら、やっと学校をでたのであった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「つかれた~っ!」
大きく伸びをしながら言う神奈を、呆れたように宮都は見た。
「・・・そりゃ、あのやり取りをしてたら疲れるよ。」
隣の拓は神奈にいじられすぎて、げっそりとしている。
しかし、神奈は拓の姿を華麗にスルーしているらしい。
視界から拓の姿だけを排除する能力でも持っているのだろうか。
・・・ピンポイントすぎて、あまり意味がない気もするが。
「あ、そういや。新しいカフェ、やっと完成したんだよね!
よかったら、宮都も行かない?おごるよ~っ。」
「え、嘘。行きた・・・っっっ!」
そう言いかけた瞬間。
頭に、激痛がはしった。
耳元で大音量の音楽を聞かせらている気分。
思わず、そこにうずくまる。
「み、宮都!?どうしたの!?」
「おい、大丈夫か!?宮都、返事しろ!」
音は、だんだんとひどくなっていく。
二人の声が、どこか遠くで聞こえている気がする。
「大・・丈・・っ。」
声が、でない。
身体から、力が抜けていく。
音は、誰かの声のように聞こえ始める。
あぁ。
神奈達に、大丈夫って言いたいのに。
ぼやけた視界が、だんだんと閉じられてくる。
「かん・・な・・・・・。」
『・・・女神フェルベーナにおいて、汝と契約を交さん!』
まぶたが完全に落ちる。
そして――――――。
そこから、宮都の姿はなくなり。
呆然としている神奈達だけが、取り残されていた。
トリップしました!
『私だからできるコト』を新しく書き始めましたので、そちらも見てくれるとうれしいです。まる。