第二十三話 少女とリヴィル4
はい。亀更新です。
知っているかもしれませんが、前話に三回目の更新、しました。
・・・いや、あとから読むと、ほんと話がつながってないとおもいまして・・・。
こんな夕暮れピアノですが、これからもよろしくお願い致します!
感想も大歓迎です!辛口でも。
細く長い、さらさらとした――まるで女のような髪が、冷たい床に触れて不思議な紋様を描く。
そのまま精霊が優しくミヤトを抱きとめ、ゆっくりと床に下ろすのを
オレはただ見ていることしかできなかった。
髪を束ねた繊細そうな髪飾りが、しゃん、と澄んだ音を立てる。
それでもオレは、まだ動くことができなかった。
あまりオレは先代の王やらなんやら、ややこしいことには興味がなかった。
こんがらがることより、単純明快がオレ。
・・・しかし、現在ヴァルの教育係となっている―――ラディル兄上、エヴィル、そして
俺の教育係であった人物から、黒い輝きをもつ人のことを生まれた時からと
言っていいくらい聞かされていた。
それでもミヤトをみて思い出せなかったのは―――――・・・若干、聞かされすぎて
トラウマになったからかもしれない。
『突然に天から舞い降り、呪われていた大地を聖なる輝きに変え、フェルベーナ王国に
あらゆる恩恵を与えると、今までのどんな国よりもこの国を栄えさせた』
というカミサマのようなありえないだろう奇跡をおこした黒髪の乙女。
それが、二百年前に実在したナギ=シイカという人らしい。
主な功績のほかにも、本を出版。ベストセラーになり、国本となる。
名前は――「ぞくごじてん」だったか。まあ、これはオレも持っている。
ヴィルも今はまっている本。
ふと思い出して、まあ、同じ黒髪のやつがいれば少しぐらい安心するんじゃないか
と思って、軽く見せたら―――。
オレはひとり、眉を寄せる。
『ナギ』と呼んでいるところからして、結構親密な間柄だったのだろうか。
さっきまで本に夢中になっていたとはとても思えない迫力でせまられ、
たじろぎつつも「二百年前だ」と言ったら、ミヤトが顔を蒼白にさせてたおれて――――。
「あ~、もうなんだってんだ・・・。」
ため息をつき、わしゃわしゃと髪をかくとひょいとミヤトを抱き上げた。
精霊たちから物言わぬ避難の声が向けられるが、無視。
ドアをいつものように足で器用に開け、エヴィの寝室へとおもむく。
・・・いいよな。病人にまで、理論漬けにはしないよな、エヴィ。
自分がエヴィの寝室で寝たときは、容赦なく他人のベッドに断りなく入ることの無礼さ、
とかいう長ったらしい理論を熱にうなされながら聞いていた気がするが、
無理やり心の奥へしまい込む。
「それにしても軽いな、コイツ・・・。」
長年武器ばっかりもっていたからと言うわけでもなく、ほんとうに軽い。
体の線も細い。こいつの元居た世界では食べ物が少なかったのか?
目覚めたときは大量の食べ物を食べさせなきゃな、となにか見当違いの意志を燃やし、
ミヤトの寝顔を見下ろす。形よく、ついばんだらさぞかし瑞々しいだろう薄桃色の唇、
髪を束ねている銀の髪飾りを外し、女物の服を来たら女にしか見えなさそうな容姿、
神秘的な黒いまつげにふちどられた瞳を隠す色白のまぶた――――。
「・・・はっ!」
何考えているんだオレはいや決してそういう嗜好ではないわけでいやそれにしても本物の女より可愛いというかカワイイってなんだいや無心になれオレはどうしちまったんだいやまてあせるな考えろしかしからだつきもきしゃだしだからなにかんがえてんだオレって―――――――キャバオーバー。
ぷしゅーっと頭から湯気をだしたような気分にさせられる。顔が真っ赤なのを自分でも感じる。
慌ててそれをごまかすように一気に転移し、エヴィルの寝室前まで到着。
いささか乱暴に扉を開け、ずんずんとベッドまで足早に歩くと、
すぅっと深呼吸をし、できるだけゆっくりとミヤトをおろす。
ぱふっ、っと軽い音とともに、無防備な寝顔をさらしているミヤトをみて苦笑する。
どうしていきなり現れた怪しいやつに、親切にしてるんだろうか。
よく元々の性格だと言われるが、今回は――それ以外に、何かがあった。
確かなつながりをもつ、共通点が。
「なんで、だろうな・・・。」
倒れてから、ミヤトは小さく笑い『ありがとう』とつぶやいていた。
現れた時からの挑戦的な笑みでも、皮肉げな笑みでも。
常に毒で彩られたようなことばでもなく。
その笑顔が、言葉が。
あまりにも純粋で。
あまりにも優しく。
あまりにも苦しそうで。
あまりにも懐かしそうで。
あまりにも切なそうで。
そこに、隠していた気持ちがあふれでているようで。
そこに、言葉にできない気持ちが込められているようで。
だから――――だから、オレはこんなにもあっさりとミヤトに心を許してしまったんだろう。
ほうっておけないようなものが、こいつにはあるから。
とりあえず父上に伝えるため、そっとミヤトのそばを離れる。
食べ物と、ナギという人の情報をもって今度はここへ来るか。
ふと思いついた考えに、オレは自分でも戸惑う。
自分には向いてないことを、なぜこんなにしようととしているのだろう。
扉をしめて、廊下を歩き出す。
その歩調が心なしか速くなっていることに、オレは気づいていなかった。
『ありがとう』
その言葉に、確かな嬉しさを感じながら。
◆おまけ その後のリヴィル。
熱も冷め、鍛錬場へ足を向けた頃。
リヴィルは、ふと思う。
・・・・・あの『ありがとう』は、精霊たちに向けられたものだったんじゃないか、と。
・・・・・・・・・・。
自分に向けられた言葉だと思っていたことに、急速に恥ずかしさがつのって体が熱くなる。
それと同時に、小さな息苦しさと痛みを覚える。
今度はオレに『ありがとう』といってくれるかもしれないと、少し期待を抱、き――――――――。
「て、なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
いやもちろんさっきもおもったがオレは別にそっちの気はなくてべつに男にしてはからだがやわらかかったなあなんておもっているわけでもすこしあたたかな匂いが心地良かったなんて思っているわけでもなくいやいやあのやわらかさが抱きしめたいなどともおもっておらずただオレは純粋にありがとうといってもらいたいわけでもいやないがそれにしても―――――――――――。
ぼふんっ。キャバオーバー。
そのあと、鍛錬場についたリヴィルは、どこか疲れたような雰囲気を醸し出していたが、
猛烈な勢いで剣を振り回しておったとさ。
読んでくださったみなさま、ありがとうございます。
今回は、リヴィルの章でした。
リヴィル、100人倒したそうな。