第十四話 少女と四人の皇子たち1
話は変わってませんが、リヴィルとエヴィルの性格を変更いたしました。
すいません。しかし、それに反省の色を見せず、総合評価が百ポイント以上になったことに、にやけています。・・・すいません。
これからも、そんな作者に呆れずに読んでくれるとありがたいです。
ヴァルは必死に樹々の間を走り抜け、城へと向かっていた。
見慣れているはずの景色さえも、どこか不気味に感じられる。
道順も頭の中からはすっ飛び、勘だけで走っている状態であったヴァルは、半泣きになっていた。
「どうしよ・・・っ。」
軽い気持ちで召喚したら悪魔を呼び出してしまったなんて兄たちに言ったら、何が待っているか。
・・・考えたくもない。自分は生きてられるのかさえも怪しいところだ。
しかし、今はそれを気にしている場合ではない。
いつのまにか、心配するところが違うくなっている気がするが、それもさておき。
ヴァルは、兄達の所へと、全速力で向かっていった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「遅い・・・。」
さらさらとペンを走らせながら、一言、エヴィルは呟いた。
いつもなら、追い返されても一時間以上もすればまたひょっこり顔を出す迷惑極まりない弟が、何故か今日に限ってはこないのだ。
その弟に甘い兄上は、時々少し心配そうに時計をみている。
リヴィも、無気力そうに眺めていた紙束から目を外し、扉の方をみていた。
まあ、こいつはただ単に外に出たいだけかもしれないが。
・・・別に、俺は気にしてない。むしろ、仕事がはかどって嬉しい限りだ。
扉の隙間からヴァルの紫色の目が覗いてないかなんて、思う暇もないのだ。
ただ、あまりにも二人が気にしているなら、こっそり精霊につれてくるよう頼んでもいい。
俺としては、断じて気にしてないが。
そして、精霊に頼もうとしたとき――――――――。
「兄さまぁっ!」
半泣きの声とともに、バンっと扉をあけて弟が入ってきた。
その声のただならぬ勢いに、思わず俺も紙から目を放してヴァルをみる。
「ど、どうした!?」
紙をばさばさと落としながら、慌てたようにリヴィがヴァルに駆け寄る。
「なにがあったんだい?」
穏やかに声をかける兄上に、しがみついてヴァルが言ったのは。
「に、庭にあく、悪魔がいりゅ・・・っ。」
その言葉を受けて、俺たちは凍りついた。
庭には、並大抵の敵とみなされるものや魔物は入れないような強固な結界を張っていたはず。
ということは、結界を破られたか、ヴァルの見間違いか。
だが、あの怯えようからして、本物だと考えた方が良いだろう。
兄上が険しい顔で精霊と会話している。
その間に、俺もリヴィもそれぞれ精霊を呼び出し、転移の準備をしておく。
精霊と話し終えたのか、兄上が合図をすると、ヴァルを抱き寄せて転移した。
一瞬遅れて俺とリヴィが転移をし、一気に庭へと着地する。
警戒しながらも、周りを見回すと、奥の方からはっきりと違和感を感じる。
「・・・精霊の気配が、多すぎだと思わないか?」
兄上の言葉に、俺は無言で頷いた。半端ではない数の精霊が、一箇所に集まっている。
訳が分からない。悪魔だとするなら、精霊は悪意を嫌うため、そこから離れているはず。
しかし、それが人間だとしても、これだけの精霊を集めることは兄上でさえもできないのだ。
そう、人間であるはずがないと、その時までは思っていた。
警戒を強くしながら、俺たちはゆっくりとその場所へと進んでいく。
だんだんとはっきりしていく光の渦。
精霊が集まる先にいたのは――――。
樹によりかかった、黒髪の。
ひとりの、少年だった。