第十二話 少女と精霊1
状況説明、いってみよう。
神奈達と帰ってたら人生初の気絶して、起きたら見知らぬ所にいた。
・・・・うん。確かに、確かにそうなんだけど。
文字にするとたったそれだけなんだけど!
それだけなんだけどさ!
混乱しながらも、こういう時にお約束の言葉を宮都は口にした。
「・・・ここはどこぉ―――――――っ!?」
ええ、普段のあたしからは想像できない大声で叫んでしまいましたよ!
近くの樹から、鳥が10羽ぐらい飛び立っていった。
異世界トリップした人の気持ちが、よぅくわかった気がする。
そりゃあ叫びたくなるよ!
・・・って、あれ?ま、待て。落ち着け、自分。
立ち上がって辺りを見回すと、誰もいない。
しかし。あたしが立っているのは、あれだ。俗に言う、魔法陣っぽいものの上。
目を開けたとき、ぼんやりと見えたのは、走り去っていく少年の姿。
・・・いや。やっぱり、待て。
「・・・あの子、金髪じゃなかった?」
日本では12才くらいじゃ、髪は染めれんだろ。
いや、外国人かもしれないんだけどさ。
――――――ってそういうことじゃなくて!
今までのことを考えると。
・・・もしかして、異世界トリップ?
いや、もしかしなくても。
「異世界トリップ―――――――――――っっっっっっ!?」
本日二回目の叫びでございました。
あれから一分ほどして、ようやく落ち着いた。
魔法陣だから、たぶんあたしは召喚されたんだと思う。
でも、どう考えてもあたしは主人公にはなれない、というか向いてない。
顔、ふつーだし。
頭、ふつーだし。
体つき、・・・まあ、神奈よりは胸はある。よくわからんが。
それに、本当のことをいうとあたしは傍観者に徹していたいのだ。
ほら、あのサブキャラみたいな。そーゆー人に仕える待女さんとか。
ザコキャラの村人Aみたいなのとか。そっちの方が断然いい。
脇役バンザイである。
・・・でも、こうも誰もいないのは変な気がする。
(姫!私たちがいますけれど!)
とにかく、森の方へ――――――。
(姫様!聞こえないのですか?)
・・・ええと。耳、おかしくなったかな。
なんか、姫とかいう単語が聞こえたんだけど。
姫に該当する人、ここにはいないし。それ以前に、あたししかいないはずなんだけど。
「だれか、いるの?」
これ、端からみたら、空気に向かって話しかける変人だろう。
しかし、意外なことに返事が返ってきた。
(よかった!私たちの声が聞こえるのですね!)
「・・・姿、みせてくれない?」
害はない気がするが、警戒しながら聞き返す。
(姫様が精霊を信じてくれたら、私たちの姿が見えると思います!)
「せ、精霊!?」
わ。やっぱ異世界。ここ、絶対異世界。
とにかく、『精霊』さんをあたしが信じないことには仕方が無いらしい。
しかし、今一番の問題は。
「いや、信じろって言われても、よく分かんないんだけど。」
(精霊がいることを受け入れればいいのです!)
うん、いま思ったけど、この『精霊』さん、ハイテンションだ。
全然関係ないけど。
―――――――精霊がいることを受け入れる、か。
確かに、機械ばっかの世界にいたから信じられないけど。
それを受け入れるのは、本当にここが異世界だと受け入れること。
そして、しばらく神奈たちに会えないということ。
でも。この際は、あくまでも前向きに考えるしかないだろう。
・・・拓にも神奈にも、もう一生会えないなんて嫌だから。
帰るために、受け入れよう。
静かに考え込んでいた宮都は、覚悟を決めて顔をあげると、はっきりと言った。
「・・・うん。精霊は、ここにいる。」
とりあえず、なんかなつかれているみたいだし。
すると。
周囲が、じんわりと光を帯びて、キラキラと輝き出す。
おもわず、宮都はそれに魅入った。
その光は、たくさんの手のひらに収まるほどの小さな人の形となると、宮都の周りを取り囲む。
「姫様、見えるっ?」
澄んだ水色の髪と瞳の少年が、不安そうに宮都の袖を引っ張った。
ほかの精霊たちも、不安そうに宮都を見上げている。
・・・か、かわいい。かわいすぎる。
内心、身悶えしてしまった宮都であった。
警戒心は跡形もなく消え去り、小さな少女や少年に宮都は笑いかける。
すると、精霊たちは嬉しそうに笑って、宮都を光となって包み込んだ。
宮都はしばらくはその光景を微笑んで見ていたが、ふと本題を思い出し。
「遊んでる場合じゃなかったぁぁぁぁっ!」
いきなりの大声に、精霊たちが驚いてピタリと止まる。
しかし、それどころではなかった。
たぶん、あの少年は城にしか見えない建物のほうに向かって走っていった。
あたしのことを言いにいくためだろう。
となると。
・・・牢屋行きの可能性もあるじゃないか。
脳をフル回転させ、それについての対処策を考え始める。
女だとしれば、処罰は甘くなるかもしれないが、何をされるか分からない。
男に変装したほうが、処罰は厳しいかもしれないが、貞操の危機は免れるだろう。
しかし、男装するには――――。
宮都は、ちらりとまだ固まっている精霊を見た。
(精霊なら、服を作れたりするかな?)
あたしになついてくれているのを利用するようで悪いが、またお礼すればいいだろう。
「・・・ね。精霊って、服とかつくれる?」
『作れます!姫様のためならなんでもつくれます!』
自分が話しかけたとは言え、さっきまで固まっていたというのに一斉に大合唱する精霊たちには
もう苦笑するしかない。
「ええっと、できるだけ早く、学ランを用意してくれるとありがたいんだけど・・・。」
『学ラン・・・とはなんですか?』
そうだった。学ランといってもこちらには通じないのか。
学ランのイメージを伝えるべく、頭に学ランを思い浮かべて――――。
『それを作ればよろしいんですねっ?』
「って頭の中読めるの!?」
『精霊ですからっ。』
いや、そういう問題じゃないんだけど・・・。
にこにこと笑いながら、先程の水色少年が尋ねる。
『あと、他にもご要望はありますか?』
「で、できたら、髪留めが欲しいです。全部、凝らなくてもいいからね?」
『・・・わかりました。』
今、一瞬残念そうな顔しなかった!?
・・・言っといて良かったかも。
なにやら作業に熱中している精霊たちをみて、宮都は冷や汗をかいたのだった。
ふふふ。
ぐだんぐだんです。すいません。
感想をいただければ、もう少しましになるかとおもいます。