表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/21

第九章


 大きな洋館だった。


 鶏が羽ばたくように、一際高い中央から左右に建物が伸びている。


 大学からの帰途にいた森川修司もりかわ しゅうじは突如目の前に現れた豪奢に西洋屋敷に、頭を傾ける。 


 ──こんなところにこんな建物あったか?


 近場の狭いアパートで一人暮らしをしている彼の脳内に、そんな疑問が浮かんだ。


 森川がこの街にやってきたのは二年前だ。


 大学進学を期に、首都圏で一人暮らしをしようとこの街に訪れた。


 便利な場所だった。


 駅は近く、商店街はあり、最寄り駅から数分で都心へと出られ、大学への交通の便も良い。


 まさに彼が探していた理想通りの環境だ。


 東北の山奥出身の彼は、最初上京した時、うれしくて周囲を散策した。


 当然、この街も日課のジョギングがてら散策した。


 だからどこに今時珍しい本格的な喫茶店があるか、おいしくて安い食事を提供する店があるか、図書館は……など全て調べ尽くしたと思っていた。


 だが妙に濃い霧が出た今日、テニス・サークルの飲み会終わりの彼は、大きく豪華な西洋屋敷に行き会った。


「しかし……」彼は記憶を巡ろうとした。


 この場所にこんな屋敷があったろうか? だとしてどうして今まで気づかなかったのだろう。


 森川は屋敷の周囲の鉄槍のような柵を眺めながら、光源に集まる虫のように、ふらふらと屋敷に近づいた。


 ふと気づくと、屋敷の門が半ば開き、一人の女性がランタンを片手に立っていた。


 赤い毛を背中で一つに編み込んでいる、ヨーロッパ系の娘だ。


 顔にはそばかすがあるがなかなかの美人で、メイド服がよく似合う……だが顔は青白く、生者の色ではなかった。


 何故か……森川はその少女に近づいた。


「うん」といつの間にか茫としている森川に、赤毛の少女が頷く。


「若くて新鮮そうね。活きもいいし、これで準備は整ったわ」


 森川修司はそのまま失踪し、二度と家族の元へ帰らなかった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ