表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/21

第十八章

 闇の中、士乃武はただ呆然とアスファルトに座り続けていた。


 ベアトリーチェが学校に入ってからどれくらい経ったか、数時間か、あるいは数分か、数秒である可能性もある。


 それくらいその世界は朧だった。


 時折馬車の馬がいななき、それで自分がまだそこに存在しているとだけは、判別できた。



「グワァァァァァ!」



 どこかから咆吼が聞こえ、彼はびくりと身体を震わせる。


 いつの間にか彼は荒い息遣いの中心にいた。


「な、なんだ?」


 不穏な周囲の空気に立ち上がる士乃武だが、次の瞬間闇が破れた。


 破れた、とした表現できなかった。


 辺りから突然幾多の人影が駆けだして来て、彼を突き飛ばし学校の校庭に走っていく。


 何人も何人も何人も……ただ、皆死体のような白い肌で、全てがグールだと分かった。


 それらが恐ろしい数で集結しようとしていた。


 突かれて倒れた拍子に落ちていた石で額を打ち、傷を作りながら、士乃武は顔を上げる。


 また現れたグールが彼を無視して校庭へと向かっていく。


 ぬらり、と額の傷から血が流れ、感触が頬まで到達する。


 だが士乃武は気にしている暇がなかった。


 闇から這い出したグールは百体はいただろう。


 そんなに沢山の怪物が、この街に潜んでいたのだ。


 ベアトリーチェが気になる。いくらなんでも百体に囲まれては一溜まりもないように思えた。


「ダイアナさん……これ、大丈夫ですか?」


 グールの出現に微かに乱れた馬を制しながら、ダイアナは目を伏せる。


「わかりません……しかし、私はベアトリーチェ様から『そこにいなさい』とのオーダーを受けました。ここから動けません」


 すっと彼女の瞳が士乃武のそれと絡まる。



「しかし、士乃武様は違います」


 士乃武は初めて気づいたように額の血を拭って、決断した。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ