#85.頂点を奪りにいく
……きうい姉のこの感じ……何だか悪い予感が……
ちなみに、これは統計もデータもないただの経験則かつ持論だが、こういう時の悪い予感というものは、大抵的中する。
「あられちゃん、8月末のライブで出演が決まってるでしょ? ライバースのメンバーとユニットを組んで出るやつ」
「は、はい。まだ誰と組むかは伝えられていませんが……それがどうかしたんですか?」
「いやぁ、その夏のライブはかなり大掛かりで他のユニットとかも毎年いっぱい出演しててね、ライブ終わりにどのユニットのパフォーマンスが良かったか人気投票があるのさ……そこでルナっちがさぁ……」
「……ルナさんが、なんと?」
大体予想は出来てしまうが、私は微かな希望を持ってきうい姉にたずねる。が、勿論その希望は無惨に砕かれることとなった。
「あられちゃんのユニットが1位じゃなかったら、ライバースに入るのを認めない、って」
……はい。おわった。
「きういさん、私のライバース編は終わりました……」
「ちょちょちょちょっと! まだ始まってすらないからぁ!」
まあ、あの星乃 ルナの事だから、何かしら企むだろうとは思っていたが。
だがまさか、ライバース加入の主導権を彼女に握られるとは考えてもいなかった。
というか新人のインターン生が完全アウェー状態で人気投票1位……? 無理難題にも程があるでしょ!
「でもねぇ、案外いけるかもしんないよぉ? なんせ、そのユニットに私もいるしねぇ!」
「えっ!? それ本当ですか!?」
「おおっ……! 久々にそんな嬉しそうな顔されたぁ……!!」
浮かれたきうい姉の発言を聞いて、私は即座に口角を下げる。
きうい姉に調子に乗られるのは気にくわない……が、実際これは大きなアドバンテージだ。
この人気投票の目的はライブの評価を数値化する為のものだろうが、投票を行うのは厳格な審査員ではなくリスナーだ。こういうものは、ある程度ライバー自体の人気に票が依存する。
だからこそ、人気トップ層のきうい姉と同じユニットに所属できるのは、この無謀の試練を一気に現実的なものへと結びつける重大な架け橋となるのだ。
他に気になるのは……残りのメンバーとその数だが……
「あられちゃん、ここで悲しいお知らせがあります……」
「……もう十分あったんですけど……なんですか、悲しいお知らせって」
「……ルナっちがねぇ……ライブ、ソロで出るんだってさぁ……」
……ん? それは悲報なのか?
確かに星乃 ルナが同じユニットにいたなら万々歳だったが、そうでなくても許容範囲、むしろ勝手に異なるユニットで対立するものだと考えていた。
それに、人気投票においてルナ単体というのは喜ばしいことでは無いだろうか。
ライバーの人気に票が依存するなら、ユニットメンバーの数が多い方が票が集まりやすいのは自明である。逆にメンバーが少数、はたまた1人となると、それは多大なディスアドバンテージとなる。
「ルナさん、私にハンデをくれてるんですかね……?」
「あられちゃん、それは違うよ……」
きうい姉は私を静止して、少し困ったような顔でそのわけを話し始める。
「ルナっちはさぁ……そのぉ……アレだから、ユニットを組んじゃうと他のメンバーが霞んじゃうんだよねぇ……だから、ユニットを組む時はいつも一歩下がって、引き立て役に徹してるの……だから、1人の時はヤバい」
きうい姉の放つ言葉の重みに、私の背筋が無理矢理に伸ばされる。
「ルナっちがソロの時は……惜しみなくパフォーマンスに全力を尽くせる。でもこれは裏を返すと……全力を尽くしたい時にしか、ルナっちはソロを選ばない。これはつまり──」
彼女が言い終わる前に私はその先を理解して、ゴクリと固唾を飲み込んだ。
──星乃 ルナ は、 甘姫 あられ を全力で潰しに来ている……!
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