#78.私は決断する
「が、あられさんに関しては、"甘姫 あられ"さんのまま活動を続けて欲しいと考えています」
ルナの言葉に私は無言で頷く。
「……案外驚かないのですね」
「まあ、だいたい予想できてましたからー」
"転生"することやそれを明言することは、この業界では暗黙の了解でタブーとなっている。
大抵の視聴者もそのマナーを理解しており、声や言動などで分かってしまうことはあっても、表立って転生について触れることは殆どない。
それを踏まえて、私が甘姫 あられの活動を休止または引退して、別のVTuberとしてライバースでデビューしたとする。
本来は転生ということを伏せてのデビューとなるが、問題はルナが配信上で私をスカウトしたことだ。これは私が転生したことを明らかにするものであり、企業側がそれを認めたことになる。
つまりはタブーを堂々と犯すことになるのだ。
ライバースという大手事務所が、わざわざ事務所の株を下げてまでそんな事をする理由が無いし、また、ルナがそれを見越していない訳が無い。
そう考えていくと、ルナが私を甘姫 あられの状態で加入させたいことは明白である。
そうでなければ、配信でわざわざスカウトする意味が無いからだ。
あのスカウトは一種の話題作り。
デビュー1ヶ月で10万人を達成した個人勢VTuberという沸騰中の肩書きに、ライバースへのスカウトというアクセントを加えて、話題の嵐を巻き起こしながらそれら全てをまるっと取り込む……それ以外の狙いを挙げるなら、衆人環視による同調圧力という所だろうか。
「あられさんは恐らく6期生に追加という形で加入することになると思います。デビュー時期も似通っていますし。それか、少し期間を空けて7期生としてデビューするかですが……基本は前者になると考えておいてください」
「それはわかりました。でも……」
私が今VTuberとして活動しているのは、無論楽しいからである。が、私の目標は、超人気VTuberになること──その果ては、VTuberの頂点に君臨すること。私は天才なのだから、得るべき成果はナンバーワンに決まっているのである。
今ここでライバースに入ってしまえば……きっと他のメンバーと同じように配信をして、同じように歌って踊って、最後は同じように言葉を並べて活動を辞める。
そんな未来が見えてしまうのだ。
これじゃあナンバーワンにはなれない。
星乃 ルナを越えられない。
そうだ、何を妥協しようとしていたのだ私!
私は才能を背負い、努力を怠らない"天才"!!
そんな私が人気ライバーAに甘んじる必要などない!
才能を背負う者には、それを腐らせない責務がある。
だから、私は敷かれたレールなど進まない!
私はNo.1になる女なのだから!!
「私は、ライバースに入りません!!!」
現在の登録者数:184,444人(234人up⤴︎︎︎)
***
第七十八話読了ありがとうございます!
・面白いっっっ!!
・はやく続き読みてぇぇぇ!!
と感じましたら、良ければブックマーク登録、感想、評価★★★★★よろしくお願いします!!
面白くなければ、★☆☆☆☆でも構いません!!
また、特にお気に入りのエピソードに《いいね》して頂けると、分析時や今後の方針を決める時にとても助かります!!
あなたの意見を聞かせてください!お願いします!!




