#76.二つの次元がリンクする
「……本当に何をしているの?」
「あ、あはは……」
頬を濡らした黒マント姿の私と泡を吹いて倒れているすぴか、そしてそれらを取り囲むきうい姉達。
確かにカオスではあるかな……
「ユリ。あなたは服を着なさい」
「は、はぁ〜い」
流れるような指摘にユリも従わざるを得ない。
さすが社長……! あの全裸徘徊が従順に!!
と感心しながらも、私は彼女の観察を始める。
星乃 ルナ。
株式会社ラナンキュラスを立ち上げた功労者でありながらライバース1期生として現在も活動するVTuber。
昨今のVTuber界の象徴として、頂点に君臨する四名のライバー──"四強"の一角。
そんな彼女の現実の姿は、画面上と何ら変わりはなかった。
勿論、言葉通り外見が似ているという話ではない。
多少の雰囲気や感じられる印象はライバーの姿とリンクするところはあるが、そもそも2次元と3次元では世界がまるで違うのであって、無論視覚的差異は生じる。
ざえはその次元すらも超えてきたが……あれは現実を元にしてモデルを作ってあるからノーカウントとしよう。
彼女が2つの次元で似通っているのは、その風格──いや、容姿以外の全てであろうか。
彼女を見ていると、まるで画面から飛び出てきたかのような、アニメのキャラクターが現実に降臨しているかのような、そんな不思議な感覚を覚える。
このような錯覚を実現させるには、キャラクターを相当に徹底する必要がある。
性格や話し方などは変なキャラ作りを行わない限りは現実と近しくなるのだが、動作や視覚的情報はどうしても差異が生じる。
VTuberの配信を視聴する時、その奥に生身の人間を見ることは稀で、むしろアニメキャラクターに近い印象を受けることが多いのではないだろうか。少なくとも私はそうだった。
しかし、星乃 ルナは違う。
こちらに歩いてくる時の仕草、髪の揺れ方、表情、口の動き、全てが2Dモデルの彼女の姿と同調している。重なって見える。
「おおおおおおおお……!!」
この感動は──2次元が3次元に、或いは3次元が2次元にいる感覚は、何とも胸を打つものがある。
思わず声を漏らす私を見て、きうい姉が笑顔になった。
「あははぁ〜流石のあられちゃんも驚くんだねぇ。ルナっちに合った子は大体そういう反応するんだ〜」
私が感心していると、ルナが髪を耳にかきあげながら口を開いた。
「あられさん、少しお時間良いかしら? 大事なお話が……」
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃいっ!!」
私の間抜けな返答にきうい姉が。
「相変わらずぽんこつな返事だなぁ〜」
とツッコミを入れると、ユリ達もクスクスと笑う。
……これはどうしてもデビュー1ヶ月記念配信を思い出してしまう。本当にこればっかりは"ぽんこつ"ムーブとかではなく、素で緊張してしまうのだ。
私は脱いだ黒マントを横になっているすぴかに優しくかけてあげると、学生鞄を肩にかけて、ルナときうい姉と三人で社長室に向かった。
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