#75.だいしゅきなホールドを
指をモジモジと動かしながら、すぴかはとても小さな声で私に話しかける。
「……ゎ……私は、い、良いと思い、ます……私も! お洋服とか作ったことあるから……この布の合わせ方とか、シルエットとか……こ、拘りを感じます!」
「……す、すぴかさん……!」
……こ、この子、良い子ね!!!!
そうよ! 分かってるじゃない! 火火 すぴか、中々見所があるわ!
これは一つ、ご褒美を与えてあげることにしよう。
「ゔぁ〜すぴかざぁーん゛っ!!」
私はそう泣き叫びながらすぴかの胸元に飛び込む。
ギュッとすぴかを抱きしめると、彼女は嬉しさから体を震わせているのが分かる。
妹にしたいVTuberランキング第一位(推定)の甘姫 あられからの抱擁……これで骨抜けにならない者などいないのである!
まあ、価値を下げない為にもあまり安売りするものでは無いのだが、この衣装の素晴らしさを理解出来たすぴかになら特別に味わわせてあげても良いだろう。
さぁ、精一杯味わうが良い! このだいしゅきホールドを!
「だっ! だめだよあられちゃん!! 二重の意味でぇ!!!」
と、焦った表情のきうい姉が抱きついている私を止める。
「もーなにをそんなにあせって……えぇーっ!?」
渋々腕を離してすぴかを解放すると、その瞬間彼女は口から泡を吹いてその場に倒れてしまった。
……まさか、力が強かった!?
いやいやいや、普通に抱きついたはずであるし、まず私自身そんなに力が強くないのでそれで気絶するなど……
私が困惑していると、ユリが苦笑いしながら口を開く。
「すぴかは超絶陰キャ過ぎて、ボディタッチされるとショックで気絶しちゃうんだよねー」
「そっ、そんなばかなぁっ!!」
「この前なんてすぴかの肩をぽんって叩いただけで意識失ったからねー……同期だから多少は慣れてるらしいけど、後ろから突然はダメだったらしい……」
なんて脆さっ……! 残念な生き物図鑑に載っていても不思議ではないくらいである。
私はすっかり枯れ気味になってしまった涙を拭って、なのの方に顔を向ける。
「なのさん、これは……」
「……期待してるの」
仲良くなれる気がしない、という弱音を吐く前に、彼女はピシャリと無責任な言葉を言い放った。
すぴかが良い子というのは十分理解できたし、近い将来関わる可能性も高いので、勿論出来る限りは仲良くしたいのだが……これは……
「あら? こんなとこでなにをしているの?」
突然に耳に入った、高貴で上品な声。
重圧となって私の体を押さえつける、凄まじい存在感。
恐る恐る声のした方角に顔を向ける。と、そこには、電脳世界と同じ髪色をした──黄色の薄いベールがかかったような、美しいクリーム色の髪を携えた彼女が凛として立っていた。
「お久しぶりね。あられさん」
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