#72.オーラは消え去る
「うむ! 出来たぞ──」
「うおっ!」
メテオがサインを書き終えたのと同じタイミングで、きうい姉が飛び出ている頭に気がついて声を上げた。私が彼女に気づいたからか、こちらから見える顔は先程の半分位になっている。
「うわぁびっくりしたぁ! あられちゃん、あれで驚いたんだね〜」
「はい、そうですー……あの人は?」
私のその質問には、単なるそのままの意味の他に、"一体何者なのか"という意図も暗に含んでいた。
彼女から放たれた、異様なオーラ。
才能か努力か、もしくはその両方か。いずれにせよビシビシと伝わってきた凄まじい圧は、単なる力比べだけならばメテオは愚か、きうい姉を凌駕しているだけに留まらず──現在のVTuber界の最高峰として君臨する"四強"が一人、星乃 ルナと並ぶと言っても過言では無いだろう。
このレベルの覇気を纏っているのなら、私も調査で存在を把握しているはずだが……しかし、星乃 ルナクラスのVTuberが同グループ内にいたなどという記憶は一切無い。
見逃していたのか? ……いや、そんなはずは無い!
これは一度目にすれば忘れることすら有り得ないレベル!!
この存在を見逃すなど、天文学者が一等星を見落とすようなもの!!!
一体どんなカラクリが仕掛けられているのか。
「おぉーい! すぴすぴ〜!!」
きうい姉がブンブンと手を振って、紫髪の彼女のあだ名らしきものを言ってこちらに呼ぶ。
と、それに驚いたのか一瞬首を引っ込めると、そろそろとゆっくりその全貌を表した。
少し低めのスラリとしたモデルのような体型。肩まで届いた黒紫の髪に、長く控えめではあるが可愛くセットされた同色の前髪。それに覆い隠されてもなお分かる端正な顔立ち。
なぜVTuberとして活動する者達はこうまで可愛いのだろうか。
顔を隠せるのだからそこまで外見に気をつける必要はないのだし、まずこんな美少女達ならVTuberとしてではなく普通に顔出しをして活動しても問題ないだろうに。
それに、"すぴすぴ"と呼ばれる彼女程のルックスならば現実世界でアイドルとして十分活躍出来そうである。
その道を捨ててVTuberを選んだのは、それほどVTuberに憧れがあったのか、あるいは……何か問題を抱えているのか。
恐らくは後者の可能性が高い。
その考えに至るのに、大した推理や論証は必要なかった。
私が彼女と目が合って悲鳴をあげた数秒後──いや、正確に言えば、私が自身に気づいていると感じた瞬間。
彼女の膨大なオーラは、その刹那でひとつ残らず消え去ってしまった。
今や彼女のオーラの大きさは、きうい姉どころかメテオやユリ、なの にすら圧倒的に敗北している。
そんな異様な変化の原因を探るため即座に脳の回転を加速させる私を置いてけぼりにして、ユリは相変わらず裸のまま両手を腰に当てドンと胸を張った。
「メテオ。水星 なの。火火 すぴか。そして私、花陽芽 ユリ。4人合わせて──ライバース5期生、ここに見参!!! ……なんてね〜あはは」
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