#7.身バレは突然に飛来する
身バレ。
それは、VTuberだけに留まらず、配信活動者から一般ネットユーザーまで、インターネットを利用する人間ならば誰もが恐れる事象である。
身バレとは本来身元バレの省略形であり、ネット上の本来匿名であるはずのユーザーが何らかの方法で現実の個人を特定されてしまうことを指す。
これにより、顔バレや住所特定、年齢や学校や職場先、ありとあらゆる情報がネットの大海に流され、一度放流されると二度と収集はつかず、いつも通りに生活することが困難になる可能性が極めて高い。
更にVTuberの場合、顔を出さず主に声だけで配信を行う、言わば個人情報を一切晒さない完全防備体勢。そんな彼彼女らの個人情報は高い価値がつき、禁句の玉手箱を開けようとする者、中身を知ろうとする者も少なくない。
そんなVTuberがもし身バレでも起こしてしまおう。身バレしたVTuberは化けの皮を剥がされ、周囲からファンが去り代わりに群がるのは見世物扱いをする野次馬。その者は二度と活動することなど出来ないだろう。
そして、身バレの特殊性はさらにもう一つある。
それは、この私でさえ利用出来ないということだ。
VTuberは基本的にバーチャルで活動する為、いくら現実世界での姿が魅力的だったとしても、必ずファンは離れていき、その後はもはやVTuberとして見られなくなっていく。更に、私は模試一位の雑誌掲載などでそこそこ顔は知られているため、"ぽんこつ"がキャラであることも暴かれるというわけだ。
以上のありすぎる訳から、身バレに関しては絶対に起こさせてはならないのだが……一体何故こんなことに!?
「なんのこと? また流行りのVTuber?」
ここはしらを切るしかない。私の頭脳と演技力で突き通す。
「最近巷で噂のVTuberなんだよー! すごく可愛くてお茶目でぽんこつなんだけどー」
巷で、噂……!!!
っといけない。こんなことで浮かれている場合では無いのだ。
しかし、こうまで最悪な予想が当たるとは。
才姫 千夏はかなりニッチなVTuberオタクである。私と知り合った時にはもうVTuber沼にどっぷりと浸かっており、本人曰くVTuberを見て育ったらしい。
その為、ひょっとすると甘姫あられの存在を知られるかもしれないと薄々思っていたのだ。
かと言って、私はいずれ認知されると分かっていて対策しない馬鹿ではない。
「このあられって子、究極にぽんこつで! 初配信でもミュート芸やら切り忘れやらポンの王道を端から端までやってくれちゃったんだけど!」
「え……それ大丈夫なの?」
「それで、凄いVTuberを見つけたって思って、あまちゃんに報告電話したの! じゃあなんとびっくり! ……ほぼ同じタイミングであられちゃんにも電話がかかってきたの!」
「なるほど……でも配信ならラグとかあるんじゃ?」
「大丈夫! 私ラグ読みできるから!」
ラグ読み!
配信に生じる、映像のデータを電波に流し受け取るまでにかかる時間で発生するタイムラグを読む行為。この行為は余程の配信上級視聴者でなければ出来ない為、チカは相当の手練だということが分かる。
大方このラグで時間系は誤魔化せると考えていたが、思っていた以上にチカは厄介なようだ。ならばすかさず次の手を繰り出すまで。
「あなたが電話を切った時にそのVTuberの子の電話も切れたの?」
「いや、その子がボタンを押し間違えて電話を切ったの! じゃあ私のも切れちゃって」
「その子は切った後に何か言ってなかったかしら?」
「えぇっと……確かかけ直すから〜って言ってた気が……」
「それで、私はあなたにかけ直したかしら?」
やはり念には念を、とあの後かけ直さなかったのが功を奏したようだ。
「あぁ……言われてみれば……でも配信中にかかってきた電話は用心してかけ直さない可能性も……」
なるほど、しぶとい。ならもうあの一手を使うしかない。
「そこまで言うのね。なら聞くわ……あなたには私が"ぽんこつ"に見えるの?」
「はっっっ……!!!!」
終局!
はっっっ!!!
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