#70.騎士は超強いらしい
握手というものは、相手が手を差し出してからそれを握るまでの過程で、実は多少の頭を使わなければならない。
人と人が対面になってする握手。
これを成立させるには、お互いが左または右の手を差し出さなければいけない。
先程の握手の際、メテオは左手を差し出した。なので私もそれに応じて左手を出し、握手を成立させた。
今度は、私の方から右手を差し出した。すると彼女は、何一つ迷うことなく左手を突き出した。
……紛うことなきアホだ。そして恐らく左利きだ。
幼稚園児でも無意識的にしているだろうことが出来ないのも問題であるが、それ以上に、今もなお何ら不思議に思わず笑顔で左手を出し続けている彼女に、私は絶句する。
私は諦めて左右を入れ替え、苦笑いしながらメテオの手を握った。
……ぐぅ……何故か無性に悔しい……負けた気がするぅ……
「メテオはバカなの。あまりに馬鹿すぎて、名前を"超強い騎士 メテオ"で登録しちゃったの。肩書きと名字の違いを理解してないの」
「……え?」
なのの補足が常軌を逸しすぎて頭が混乱してくるが、それとは別に何か引っかかることがある。
超強い騎士……? どこかで聞いたことが……えーと……確か……
ふと、私の脳裏にチカの顔がよぎる。
そうだ! 思い出した!
今から半年ほど前だろうか。まだ甘姫 あられとしてデビューする前、本格的にVTuber活動について考え始めた時に、"ぽんこつ"というキャラクターを確立させるため、チカにぽんこつなVTuberを教えて貰ったのだ。
そしてその中で一番インパクトのあったライバーが彼女──超強い騎士 メテオだった。
"超強い騎士"の印象が強すぎてメテオだけでは思い出せなかったが、甘姫 あられを誕生させる上での重要な基盤の一つであったことには間違いないだろう。
まさかこんな所で出会えるとは……これも何かの縁だ。サインでも貰っておいた方が良いかもしれない。
「メテオさん! サインもらってもいいですかー!!」
「うむ! 構わんぞ!!」
「えぇ!? あられちゃん! 私に会った時はそんなこと一言もぉ……」
悲しそうな目で見つめてくるきうい姉を放って、私は足の間に挟んでいた鞄を持ち上げる。
何かサイン色紙の代わりになるようなものはあっただろうか……
ホックに手を伸ばしてパカッと開いたその時、私の目線は鞄ではなく、メテオの通ってきた廊下の方にふと吸い寄せられた。
と、その一瞬、私の体は即座に硬直する。
そして、突如現れた大量の冷や汗が全身を覆った。
嘘か誠か、はたまた幻覚か。
私の視線の先には、壁から突如生える髪の長い女の生首があった。
「ぎ、ぎゃあああああ!!!!」
私は思わず手元の鞄を空中に投げ捨ててしまう。
そして、鞄の中にしまっていたその物達が、解き放たれてしまったのだ。
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