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#69.彼女は豪快に笑う

 

 私はメテオの言葉に答えようと口を開いて、声の出る寸前で何とか踏みとどまる。


 そうだ、私は今"甘姫 あられ"なのだ。

 ここでもし丁寧な言葉遣いや知的な表現を使ってしまえば、"ぽんこつ"が演技だとバレてしまう!


 ここは、声質自体はオフの時と変化させずに、言葉遣いは配信の時と寄せて受け答えしよう。

 これで、上手くオフの甘姫あられ感が演出できるはずだ。


「よ、よろしくおねがいしまーす!」


 私はメテオの左手を両手で包んでブンブンと上下に振る。

 さあ、どうだ! 如何にも幼稚っぽいだろう!!


「ハッハァー! 元気が良いな!!! 嫌いじゃないぞぉーぬーーーんっ!!!」


「うぇ? ……う、うわあぁぁーーーっ!!!」


 私が率先して手を振っていたはずなのだが……いつの間にか主導権がメテオに移り、彼女の力強い大振りに私は耐え切れず吹っ飛ばされてしまう。


 ……私の行動を真似された上で、越えられた……!?


 私が唖然としながらメテオのドヤ顔を眺めていると、今度は私を庇うようにしてユリが割り込む。


「ちょっとメテオ! 新人になんてことしてるのー!?」


「ハッハァすまんすまん! つい楽しくなってしまってな」


 ユリはメテオから私に視線を移すと、キッと鋭くとがった目を丸く優しいものに変化させて、胸の前で掌を合わせる。


「ごめんね〜あられちゃん。この子"ド"がつくほどの"アホ"だからー……許してあげて〜」


 全裸で事務所をうろうく自由人のユリに頭を下げさせるメテオ……これは相当らしい。


「ぜ、ぜんぜんだいじょぶですよー! あらためてよろしくおねがいします」


 今度は私から右手を差し出す。


「あぁ! よろしく!! アーメン!」


「アーメン……?」


「アーメンじゃなくてあられちゃんね」


 ユリのツッコミのおかげで、メテオが私の名前を間違えたのだということに気づく。

 いや、アーメンとあられって最初の文字しか合っていないが……


「おぉ! すまんな! よろしくたのもうあられ! 私はライバース5期生のメテオだ!!」


「あ、はい。さっき聞きましたけど……」


「む? そうだったか!? ハッハァーすまんな!!!」


 そう言ってメテオが笑顔で差し出してきた手は、()()だった。


 っ……!


 これは……想像を絶する程のアホ……!!


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***

第六十九話読了ありがとうございます!


・面白いっっっ!!

・はやく続き読みてぇぇぇ!!


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― 新着の感想 ―
[良い点] >そう言ってメテオが笑顔で差し出してきた手は、左・手・だった。  そういう時は気がつかないふりをして相手の左手の甲側の親指と人差し指の付け根にこちらの右手の親指をねじり込むようにしながら…
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