#67.怪物は結集する
定期的な清掃の成果が感じられる、純白の床。
イベントのポスターやフィギュア、トロフィーなどで丁寧に装飾された壁。
その健全でクリーンな空間から見事に乖離した生まれたままの姿のその女性は、客人の来訪などに一切気にする様子も見せず、組んでいた腕を崩して右手の人差し指を前に突き出した。
「コラ! 私のパンツ返しなさーい!」
彼女の指差す方向を目で追ってみると、そこには黄色の髪をした小さな女の子が黒いパンツを頭に被って立っていた。
「パンツを取られるユリが悪いの。"なの"は悪くないの」
「こんのクソガキぃ〜っ!!」
そう発狂した彼女は、その場でクルクルと回る女児の煽りに我慢できす飛びつくが、女児はその小さな体を活かしてちょこまかと逃げ回る。
「おんどりゃあー!!! 逃げるなぁ〜!!!」
「ちょっとー!!! お客さん来てるから大人しくしてぇー!!!」
隣のきうい姉が大声で注意すると、彼女達の動きはピタッと止まり、裸の女性がこちらに体を向けた。
「あっ! きうい先輩〜! いらっしゃったんですね〜」
「今気づいたんかいっ!!」
……きうい姉がツッコミに回るなんて……恐ろしい場所っ!!
「もぉー、ごめんね〜あられちゃん。彼女達は後輩のライバーなのー。全裸の方が"花陽芽 ユリ"ちゃんで、このちっこいのが"水星 なの"ちゃんね」
いつの間にか足元に移動していた女児の頭をきうい姉が撫でる。
彼女はそれから目線をユリに向け直すと、少し叱責するような口調で彼女に言葉を投げかける。
「ユリちゃん、事務所では服着ろっていつも言ってるでしょー?」
「いや、それはぁ……私がソファで寝てる時に、なのがパンツ脱がして持っていったから」
「なの悪くないの。パンイチで無防備に寝てるユリが悪いの」
「なぁんだぁとおぉこのガキぃ!!」
「パンイチで寝るのやめなさい!! 風邪ひくからぁっ!」
きうい姉が普段あまり日の目を浴びない"姉"の部分をここぞとばかりに発揮してみるが、ユリの方もそう易々と引き下がらない。
「きうい先輩だって毎日缶ビール5本摂取する自堕落中毒女ですよねー? 言われる筋合いないでーす」
「なぁっ!? そ、それは今関係ないでしょぉ!? あんたのせいでいつまでたっても男ライバーが入ってこないんだよお!!」
「それってライバースの方針で私のせいじゃないですよね〜? 暴論ですよ暴論」
「きうい姉。今のはなのもどうかと思うの」
「うるっさいなぁあんたらさっきまで喧嘩してたやろがいっ!!!」
きうい姉が論破されているのはまあ想定内として……それよりも目の前で繰り広げられるとてつもない回転数の会話に私は思わず唖然としてしまう。
高速の掛け合い、プロレス、ツッコミ要素しか存在しない会話。
個性。能力。面白さ。
その全てのパラメータが3人共異常に高い。
怪物はきうい姉だけじゃなかった。
今はまだ埋もれているだけで、きうい姉と互角に話しあえる程彼女達の能力は間違いなく突出している。
ライバース……怪物の巣窟なの……?
私は突然インフレを起こし始める急展開に直面し、思わず圧倒される。が、すぐに正気を取り戻すと、どうにかこの会話に割り込もうと口を開く。
ここで圧倒されてたら、甘姫あられの名が廃るっ……!
「あ、あの──」
「ハッハァーーーーーーッ!!!!!!!」
私の言葉は、廊下の奥から響いてくるその声に無惨にもかき消されてしまった。
その声の主は、あたかも王者の風格でのっしのっしとこちらに歩いてくる。
その真っ直ぐな芯を持った瞳は、彼女自身から湧き出る圧倒的自信を象徴しているかのように感じられた。
「騒がしいぞ! 祭りか!? 祭りだな!!! ゆかいゆかいぃっ!!!!!」
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第六十七話読了ありがとうございます!
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