#61.チカは召される
そろそろ本編進めます。
あと800ptありがとうございます!
ボイスは遂にラストシーン。
チカは老後の安眠を目前にして興奮する。
が、きうい姉は何故か、マイク替わりのスマホから顔を離した。
そしてそのそばに立つチカに近づいていく。
ベリッ
「んえっ!?」
きうい姉はチカの口に貼ってあるガムテープを勢い良く取り去った。それにはチカも思わず驚きと困惑の声を漏らす。
一体何を──!?
私がその疑問に解答を出すよりも先に、きうい姉は実行に移った。
途端、塞がれる唇。
一瞬、何が起きたか分からなかった。
憧れてたようなモノではない、乱暴なキス。
──だったのだろう、チカにとっては。
「……っぷはぁっ!」
とてもキス直後のものとは思えないような音で、彼女はチカから唇を離す。その瞬間チカは顔を真っ赤に染め上げて蒸気を吹き上げながらその場に倒れ込んだ。
「もう、一体なんのつもりですか?」
私が呆れ気味にその理由を問うと、きうい姉はニヤニヤしながらえへへーと頭を搔いた。
「いやぁー、目の前に本物いるんだしさー? わざわざボイスなんて遠回しなことするより、直接やった方が良いかなーってぇ」
「なんですかそれ……良い訳ないに決まってるでしょ……ほら、突然そんなことするから……」
「あびゃびゃびゃびゃびゃびゃびゃ」
「……チカもとうとう限界を超えて壊れちゃいました」
「へぇー、人間って限界超えたらこうなるんだねー」
「感心してる場合じゃないですよ! どう戻すんですかこれ!」
私は一生懸命チカの体を揺らしてみるが、一向に正気に戻る兆しが見えない。
「まあまあー、チカちゃんも喜んでるみたいだしさぁー」
チカの顔を見てみると天に召されたような何とも幸せそうな表情をしていた。
私は彼女の口から零れる大量の唾液を眺めながら思わず頭を抱える。なぜこの子はこう情けないのか……少しはこの私を見習って欲しいものだ。
きうい姉はひと仕事終えたような雰囲気でチカのスマホを手に取ると、録音を停止して音声データを削除した。
「あれ? 消しちゃうんですか?」
「まあねえー、冷静に考えてみたら、有料級ボイスを初対面のファンの子に渡すのはちょっとねぇー……ルナっちにも怒られちゃうし〜」
キスの方が駄目なのではないか……という疑問を心の内にそっとしまうと、将来有望な黒歴史候補が消滅したことにひと安心する。
というか、まず第一に道端で収録しているのがおかしいのだ。ほとんど人通りのない道であるとしても、これでは流石に"身バレしたいです"と言っているようなものである。
こんなことをしていたらいずれ"ぽんこつ"系VTuberではなく、"身バレ"系VTuberになってしまうかもしれない。
……まあそれも人気が出そうではあるが。
「あぴゃああああぴゃあああ」
あ、鳴き声が変わった。
地面で仰向けになり永遠と鳴き続ける彼女に、次第に哀愁も感じられてくる。
チカが正気に戻ったら、ボイスの消失で号泣する彼女をなだめてあげよう……うん、そうしよう。
私がチカの前で合掌して南無阿弥陀仏を唱えていると、きうい姉の上がっていた口角が少し下がり、神妙な顔つきになる。
「ねえあられちゃん。これからちょっとふたりで話さない? 大事な話があるんだけどさ」
「!」
ボイスの時とはまた少し違う、大人びた声。それに私は少なからず驚 く。
「大事な話、ですか」
大体察しはつく。
おそらくVTuber関係のことだろう。
きうい姉は、今度はまたいつものような無邪気な声に戻ると、困り顔をして首をひねらせた。
「んー、でも私が話しちゃうのはなぁー……あられちゃん、今週の日曜日空いてる?」
今週は確か……
「丁度体育祭で」
「へぇー、体育祭かぁ、いいね! 青春だねぇ〜! でも、だとすると……あ!」
何かを思いついたらしく、きうい姉はキラキラした顔でその内容を私に伝える。
「あられちゃん、今から時間ある?」
「……え!? 今からですか!?」
「うむ! 行こう!! 今から!!!」
……ん? んんん?? い、行くって……一体どこに!?!?!?
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どこに行くか当てられたら100万円あげます。嘘です。
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