#56.天才は変装する
放課後、校舎裏。
人気のないじめじめとしたその場所で、例の男子グループはコソコソと密談をしていた。
「なあ、いい加減もう脅しちまおうぜ」
「ざえちゃんを悲しい目に合わせたら許さないって言ってるだろ──」
「だぁーから、そういうことじゃなくてさ。これは取引だ。口止め料としてちょっとお小遣い頂くだけだよ。それに、お前だって握手とかしてもらえるかもよ?」
「んぐ……それならまあいいか……」
「よし! じゃあ決まりだ! 明日の朝アイツを呼び出して──」
「そこまでよ」
物陰から隠れ見ていた私は、彼らの下劣な会話に我慢できず制止させる。
「だ、誰だお前──ほ、ほんとに誰だ……?」
彼らは私の姿を見て思わず戸惑う。
そう、今の私は正体を隠すため変装しているのだ!
全身を黒マントで覆い、顔には白い仮面を取り付けてある。その様子から溢れ出る只者では無い雰囲気に、彼らは戸惑いを隠せないのだろう。
……私も、少しかっこよすぎたかなとは思っている。
数日ほど前に変装衣装をどんなものにするか考えていたのだが、考えているうちに何だか楽しくなってしまい、細部まで拘り抜いた最高傑作にしてしまったのだ。
特に注目して欲しいのはこの黒マントの材質と模様! 大型店で迷いに迷って選び抜いた三種の布を独自に縫合させたので、何とも趣深い仕上がりに!
更には、流行りに敏感な男子高校生さえも骨抜きにしてしまうこの拘り抜いたシルエット!!
黒と白のコントラストを意識しつつ、流行りのモノトーンを取り入れたシンプル且つユニークなこのデザイン!!!
まあ、この衣装の素晴らしさを分かってくれて私はとても気分が良い。軽い注意喚起くらいで終わらせてあげよう──
「だ……ださすぎる!!!! そこら辺の厨二病でももっとマシなファッションしてるぞ!?!?」
ハイ、コ〇す。
はぁぁぁぁ一体どういう感性をしているのかしら!!! こんなにも唯一無二で美しい、私作の最高傑作よ!? 教育に問題がありそうね!! 親の顔が見てみたいわ!!!!
……まあいい。別にこんな屑共に非難されたところで動揺する私では無い。とりあえず二度とイキがった発言が出来ないよう丁寧にトラウマを植え付けてあげよう。
「あなた達、ざえに手出しするのはやめておきなさい。どうなっても知らないわよ?」
私の発言に屑達は少し動揺する
「……はぁ? お前に関係ねぇだろ!! どこのどいつか知らねぇが、俺達を舐めてると痛い目見るぜ?」
一人の屑が下品に笑うと、隣の屑も連鎖反応を起こして声を上げる。
はぁ……こんな産業廃棄物がクラスにいたなんて……掃除をより徹底にする必要があるらしい。
「 俺ら全員、三年は柔道スクールに通ってる実力者! 女一人にどうにかできる訳ねぇ! んじゃ、さっさと失せな! 小遣いが待ってんだ──」
カラン カラン
「あ? なんだ?」
私は右手に持っていたそれをパッと放して地面に落とした。
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第五十六話読了ありがとうございます!
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