#54.受けは受けのままが良い
700ptありがとうございます!!
23時にもう一話あげます!
「……できる。キス」
「ちょっ! あんたまで何言って……」
肩を掴む力が一層強くなっていくのを感じる。じっと私を見つめるざえの顔は、とても冗談とは思えない。
この子、まさか本気で……!?
やはり私にはざえの考えていることが分からない。
突然私とコラボしたいと申し出てきて、その配信で私の演技を暴き、それを深く反省して、今は私に恋している……?
一体どう接すれば良いのだ! この気まぐれモンスターに!!
もしかしたら、きうい姉ならざえの真意が分かるかも……いや、彼女も多忙だろうし、第一これは私の問題である。そう安易に付き合わせる訳にはいかな──うぇ!?
グイッと顔を近づけてくるざえに思わず気が動転してしまう。
ざえの顔までわずか数センチ、鼻の先が当たるか当たらないかの至近距離。
──近っ……!! まつ毛長っ!
自然と鼓動が早くなるのを感じる。ドキドキしているの? 女の子同士なのに!?
と、とにかくこのままじゃまずい!!
「チ、チカぁっ!! 何とかしてっ!!」
「あ、あわわわわわわわ」
……だめだ。唯一の頼みであるチカは、両手で顔を覆いながらあわあわしている……指と指の隙間からはしっかりとこちらを覗いているようだが。
そうしている間にも、ざえはゆっくりだが確実に唇と唇の距離を縮めていく。
もう、ざえの吐く温かい息が当たるくらいに。
私はたまらずぎゅっと目を瞑る。
もう……むりーーーっ!!
……パクっ
「……ん?」
覚悟していた感覚が一向に来ないのと、突如現れた不思議なオノマトペに、私は固く閉じていた目と口をゆっくりと緩ませる。
私の目に映った景色は、私の唇ではなくて右手のサンドウィッチに口を当てているざえの姿だった。
ざえは口の中のサンドウィッチを咀嚼して飲み込むと。
「……美味しい」
と少し照れくさそうに言った。
「……はああああ!? 美味しい……じゃないわよ!! キスするんじゃなかったの!?」
「……? あまはして欲しかったの?」
「いっ!? そ、そんなの一言も言ってないでしょ!?!?」
私が大声で反抗の意を示していると、ざえは平然と私のサンドウィッチを指さした。
「……間接キス」
……間接キス、かぁ……
強ばっていた私の全身が瞬く間に開放された。
肺に溜まったいっぱいの空気を吐き出しながらチカの方に目を向ける。助けずに傍観していた彼女に文句を言ってやろうとキッと睨みつけてみるが……
「……ざえあま……いい……いいよぉ……♡」
よだれを垂らしてブツブツと謎の呪文を唱える彼女が不気味過ぎたのでやめておいた。
「……きうい師匠、上手くできなかった」
「ん? ざえ、今なんか言った?」
「……なんでもない」
こうしてひと悶着あったものの、私のファーストキスはなんとか守られたのであった。
現在の登録者数:170,776人(252人up⤴︎︎︎)
夕日で教室が朱に染まった、とある日の放課後。
「……なあなあ、転校生ってもしかして……コレじゃない?」
1人の男子生徒の声が、教室に響き渡る。
彼が掲げたスマホの画面には、ライバーの七歩之 才の姿が表示されていた。
***
第五十四話読了ありがとうございます!
・面白いっっっ!!
・はやく続き読みてぇぇぇ!!
と感じましたら、良ければブックマーク登録、感想、評価★★★★★よろしくお願いします!!
面白くなければ、★☆☆☆☆でも構いません!!
また、特にお気に入りのエピソードに《いいね》して頂けると、分析時や今後の方針を決める時にとても助かります!!
あなたの意見を聞かせてください!お願いします!!




