#52.興味は恋へと進化する
「惚れたんです!」
予想だにしなかったその言葉に、私は思わず混乱してしまう。
惚れた? それは恋愛的な意味で間違いないのだろうか……ざえが私に? そもそも女同士なのに……いや、別に多様性を否定している訳では無いのだが……それにしても何故?
頭上でひよこを回している私に構うことなく、ざえは目を輝かせて興奮気味に語り出す。
「この前の件は、本当に申し訳ございませんでした。改めて謝罪させてください……しかし、私はあの時、確かにあまさんを追い詰めたはずなんです」
「……えぇ、とんだ奇襲だったわ」
「しかし、あまさんはその絶体絶命の状況から建て直して場をひっくり返した。それに加え、自分だけでなく加害者である私すらの株も上げるなど……私には全く思いつかない戦略でした……あれは紛うことなき神業です」
ざえは早口でまくし立てる。
「そして、あなたのことをもっと知りたいと思ったのです!」
……だからって身元を特定して実際に会いに来るだろうか?
どうやら常識もモラルも好奇心も桁外れらしい。
「……つまり、私に興味があったってこと?」
「違います! これは興味などという安っぽい言葉では言い表せません。適切な言葉を選ぶとしたら……恋!」
真剣な眼差しでそう言い放った彼女に少し圧倒される。
彼女はこんなキャラだっただろうか、と一瞬疑問に思うが、以前のきうい姉の言葉を思い出して腑に落ちる。
『ざえちゃんは冷静沈着な天才! って感じで謳ってるけど、実際は感情に引っ張られすぎてるような感じがして』というきうい姉の言葉通り、彼女はかなりの感情型らしい。
そういえばきうい姉は『二人ともそのバランスを考えたら、もっと上手くいく』とも言っていた。理性と感情のバランス……もしかしたらざえはそれを私から学ぶ為にこの学校へ来たのかもしれない。ざえ自身は気づいていないかもしれないが。
無意識のうちに自分の必要なものを学習しようとしている……まさに"天才"と呼ぶにふさわしい性格だ。
まあ……別の高校に転校しろ、とは言いづらいし……それに私も彼女から学べることが少なからずあるようであるし、それなら仲良くした方が合理的だろう。
「……分かったわ。ざえ、仲良くしましょう」
「はい、よろしくお願い致します」
「……仲良くするのだから敬語じゃなくていいのよ」
あまさん、と呼ばれるのも癪に障るし。
「わかった。よろしく」
「……なんでカタコトチックなのよ」
「私ハーフだから。この方が話しやすい」
「あまちゃーん!!」
遠くから聞こえてくる私を呼ぶ声に振り向くと、手をバタバタと振りながらこちらに走ってくるチカの姿が見えた。
「あら、チカ。朝礼終わったの?」
「朝礼終わったの? ……じゃないよー!! 初日の転校生をラチるなんてどうかしてるよー!! 私が先生に頭下げたんだからね!」
チカは息切れしつつも必死に頬を膨らませた。
チカに謝罪の言葉を述べながら視線をざえの方に戻すと、ざえが少し不安そうな顔でチカを見ているのに気づく。
「ざえ、こっちは私の友達のチカ。で、チカ。この子は転校生のざえ。この前私が配信でコラボした子よ」
「へぇー配信でコラボしてたざえちゃんかー。よろしくねー」
「あまの友達……興味がある。仲良くしたい」
案外すんなりと受け入れるチカと、意外と友好的なざえに二重に驚く。これは何とか上手くやれそう──
「えええええええコラボしてたってあの七歩之 才えええええぇ!?!?!?!?」
…………あぁ、先が思いやられる……
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