#51.リアルで出会う
日々の入念な手入れが伝わってくる艶々とした黒髪、異国味を感じる褐色肌に、宝石のように透き通る緑の瞳、何より3次元とは思えないほどに整った顔立ちが、VTuber 七歩之 才 の容姿にリンクする。
にわかに信じ難いことだが……間違いない。今私の目の前にいる"七歩之 才"は、VTuberとしてコラボしたあの"七歩之 才"と同一人物なのであろう。
ざえなら、VTuberのモデル作成を頼む時に、資料として自分の写真を渡す姿が想像出来る。
あの特徴的な活動名が本名なのは流石に驚くが。
……と、私が状況を整理している間に、才が口を開こうとするのが見えた。
その時私は直感的に悟る。と同時に体を俊敏に働かせ、高速でざえに近づく。
「甘姫あ──モゴッ!?」
彼女がその言葉を言い切る前に飛びかかって口を塞ぐと、勢い任せにそのまま教室から連れ出した。
もはや恒例となった中庭のベンチにざえを座らせると、私は圧をかけて問いただす。
「あなた、VTuberのざえで間違いないのね!?」
「はい」
「……どういうこと? 説明して」
私の勘違いという僅かな希望さえも打ち砕かれ、ため息混じりに説明を要求する。
「……訳あってこの学校に転校することになりました。まさかあまさんも同じ学校だったとは驚きました」
……彼女の言うことを信用する限り、ただの偶然のようだ。ならば仕方ないと言わざるを得ない。
少し複雑な事情もありそうだし、詳しく聞くのは気が引ける。この状況はひとまず飲み込んで、今はどうやって接していくべきか考える方が先……
ん? ちょっと待て。気になるところがある。
「あなた、何で私の名前を知っているの? さっき会ったばかりなのに……」
「それは……えっと……」
「……何かヤったわね?」
ざえは少しの間無言で俯いた後、意を決したように話し出した。
「……あまさんの年齢や話し方などの情報を配信から収集して、そこから地域を割り出して高偏差値帯の高校をしらみ潰しに……後はコレを参照して……」
彼女はそう言ってある冊子を取り出した。
表紙には"2023年寸代実践模試成績優秀者リスト"と書かれている。……中学の頃の模試だろうか。この類の冊子には本名や中学校名、下手したら顔写真まで掲載されていることもある。ざえはここから情報を得たわけだ。
「でも、どうやって転校してきたの? 高校なんだからそう簡単に転校できるものじゃないはず……」
「両親が海外で企業を数多く経営していて……お金は腐るほどありました」
……お金を積んだ、という訳だ。
全く、私の周りにはどうしてこうお金持ちが多いのか。
ここで一つ疑問が浮かぶ。
ざえが時間と金銭を消費して私の元にたどり着いたことはわかったが……一体何の理由があってそんなことをしたのだろうか。
嫌な仮説が頭をよぎる。
まさか、以前の配信で全責任を擦り付けたことに激怒して復讐しに来たのではないだろうか……
「……ど、どうしてそこまで?」
恐る恐る尋ねる。
「……たんです」
「……え? 今何て……」
彼女はすーっと息を吸うと、大きな声で宣言した。
「惚れたんです!」
……え?
「えええええええええええええ!?」
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