#50.たわわは暴れる
「チカ! このままじゃ遅刻するわ! 学校まで走るわよ!」
「えー!? 走るのぉー?」
露骨に嫌そうな顔をするチカを無視して私は走り出す。
この偏差値83の頭脳程では無いが、運動面に置いても多少は自信がある。淑女の嗜みとして日々の運動に気を使う事で体力は自然とつくし、技術面においては分析&学習によって効率的に習得できる。それに、元々運動神経が悪い訳でもない。
私の足ならギリギリ間に合うだろう。が……
チカはおそらく私に着いてくることが出来ないだろうし、彼女を放って自分だけ先を急ぐのも気が引ける。まず遅刻は免れないだろう。
「あまちゃーん、どうせ間に合わないんだからゆっくり行こうよー」
「チカ、その精神は駄目よ。間に合わないから諦めるんじゃなくて、ダメージを最小限に抑えることが大事なのよ」
「ひぃーストイックだなぁ……」
「さっ、納得したなら走るわよ! 時間ないんだから!」
私はチカに追いつかれないかつ引き離してしまわない速度に調節して走る。
追いつけそうで追いつけないこの絶妙な距離感が、チカの走るスピードを底上げさせるのだ。
50m走などで速い人と走るとタイムが縮まったり、馬ににんじんをつけて走らせるのもこの原理と言える。
こうして私達は走り始めたのだが、少ししてから変な音が聞こえ始める。
たゆん ぽわん
……? 何だろう、この柔らかな効果音は。
自然と弾力を感じるような……まるで……マシュマロ……
どうやらその奇妙な音は私の背後から発せられているようで、気になって後ろに目を向けてみると……そこには暴走する胸部の脂肪に振り回されるチカの姿があった。
普段は着痩せしていたのか、そんなに大きくは見えなかったが……チカの運動能力を底上げさせたことで、別の部分も限界突破してしまったようだ。
チカが地面を蹴る度に、その豊満な脂肪が四方八方に暴れ回る。
それに比べて、私は……
足元に目を移すと、そこにはストンと落ちる断崖絶壁……私はスレンダーなこの容姿すらも完璧だと自負してきたが、目の前の山も谷もない大平原にどこか虚しさを覚えた。
ぽわん ふわん たゆん
……イラッ。
「あ、あまちゃん!? なんかどんどん速くなってない!?」
「……弱音を吐くのはその生産性の欠片もない脂肪の塊を削ぎ落としてからにして」
「え゛!! なんで怒ってるの!?」
……別に羨ましいだなんて思っていない。断じて。
こうして走り続けること約8分。
3分遅れではあるが無事学校に到着することが出来た。
私達は急ぎ足で階段を登ると、教室の前で足を止める。チカと私が在籍する1年A組は比較的大人しいクラスなのだが……今日は珍しく教室内が騒がしいようで、期待と不安が混じりあったようなクラスメイト達の声が廊下にまで漏れ出ていた。
「チカ、何かしているみたいだから後ろの扉から入りましょう」
「そうだね」
チカは先程まで暴走していた胸部の肉塊を落ち着かせると、後ろの扉を開けて教室に入ったので、私もそれに続く。
一瞬クラスメイトの視線が私達に集まるが、それらはすぐにバラけて教室の前の方に向けられた。
その不自然な動きにつられて私も前に目を向けると……そこには2次元で見覚えのある顔と、既視感のある名前が並んであった。
し、七歩之 才……!?
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