#49.受けは攻めに転じる
「……チカおねえちゃん……なんか、かおあかいねー……もしかして、ほんとはおきてたりする? ……ねてるふりして妹にちゅーさせるなんて……わるいおねえちゃんだね」
どんどんと息遣いの荒くなるチカを横目に、私もどんどんヒートアップする。
「どぉーするー? ちゅーしてほしいー? ちゅーしてほしいなら、そのくちでいってみてよ」
チカは顔を真っ赤にして口をパクパクさせる。口の形は"う" "う" "い" "え"……"ちゅーして"かぁ……その返答ではまだ了承できない。
「やっぱりおきてるじゃん……でもー、おねがいするときは……けいごじゃないの?」
チカがあわあわしながら"ちゅーしてください"と口をパクパク動かしたので、折角なのでくすっと笑ってあげる。
「もー、あさいちからしょうがないなぁー、へんたいおねえちゃーん。じゃあ、するよ?」
間隔を少し開けて焦らす。
「いくよ……? くちびるつきだして……ほら、ちゅー──」
「いやああああああああああああああああああああああ♡♡♡♡♡」
「えぇっ!?」
流石に耐えきれなかったようでチカは堪らず発狂し、その爆音で私も正気に戻る。
「可愛すぎるぅぅぅ♡♡♡♡やばいよやばいよ国宝級だよぉぉぉ♡♡♡♡♡家宝にして代々受け継いでいくよおぉ♡♡♡♡♡♡」
「それは絶対にやめて! あと、最後のところチカの声入ってるけど良いの?」
「…………あっ」
チカの上がりきった口角が瞬く間に落下し、顔色は興奮の赤から絶望の青へと変容する。その様子はさながら赤色リトマス紙のようだ。
「うぅ……やらかしたぁ……私は大馬鹿者だよぉ……!!!!」
「そ、そこまで落ち込まなくても……」
「落ち込むよぉ!! あともうちょっとでっ……幸せな老後を過ごせたのにーっ!!!」
「いつまで使う気よ……」
まあ私も結構やり過ぎてしまったし、こんなボイスを一生使われることを考えるとチカの発狂には感謝せねばならない、かもしれない。
「あまちゃん……? 録りなおしってぇ……」
「ダメ。100%チカのミスなんだから。ちゃんと約束も守ってね」
「うぅ……はい……」
「じゃあこの録音も消していいわね──」
「だめーーーーっ!!! どうにか編集して完璧なボイスに仕立て上げるからっ!! 絶対に!!!」
……か……確固たる意志を感じる……
私がしぶしぶスマホを渡すと、チカは一安心したようでほっとした表情を見せた。
長年の友達であるし、とてつもなく恥ずかしいことに代わりは無いが……私の声をここまで大切に扱ってくれる事が、少しだけ嬉しかった。
やはりチカとはこの清い関係を続けていきたい──
「はいっ! これボイス料金ねっ!」
「はぁ……」
言ったそばからお金を貢ごうとしてくる彼女に堪らず呆れてしまう。そういえば、お金を受け取らなかったから、シチュボを流される羽目になったのだった。
チカも意外と強情であるし、受け取らないと話が進まなそうだが……流石に友達から数十万を貢がれるのは気が引ける。
私は彼女の手にある札束から5枚だけ抜き取った。
「スパチャの1日上限金額は5万円だから、それだけ受けとっておくわ」
「ちぇー」
少し不満げにしつつもある程度は納得したようで、彼女は大人しく札束を鞄の中にしまった。
全く、道端で随分話し込んでしまった。私はため息を着きながら自分のスマホを取り出した。今の時間は……
「8時25分!?」
まずい! 遅刻する……!!
現金の登録者数:168,625人(168人up⤴︎︎︎)
***
第四十九話読了ありがとうございます!
・面白いっっっ!!
・はやく続き読みてぇぇぇ!!
と感じましたら、良ければブックマーク登録、感想、評価★★★★★よろしくお願いします!!
面白くなければ、★☆☆☆☆でも構いません!!
また、特にお気に入りのエピソードに《いいね》して頂けると、分析時や今後の方針を決める時にとても助かります!!
あなたの意見を聞かせてください!お願いします!!




