#44.だって、私は。
「2132537411513!!」
コメント
:急にどした?
:数字?
:なに?
:なんて?
:また数列?
:どういうこと?
私の意味不明発言にコメント欄はひどく困惑する。
「な、なんですか? 突然」
それはざえも例外ではなかったようだ。
「ざえちゃん、これなんだとおもう? もうなんて言ったかわすれちゃったけどー……」
「……2132537411513と言っていました」
コメント
:???
:何が始まるん?
:あの日の再来?
:リスナー置いてけぼりー……
:なんこれ?
:説明してー!!!
コメントの要望にはまだ応えることが出来ない。
これは、ざえが気づかない且つ、視聴者には察してもらう必要があるのだ。
2132537411513。
これは一見意味の無い数字の羅列のように見える。が、実はこれは意味のある数列だ。
素数{2,3,5,7,11,13……}と自然数{1,2,3,4,5……}を交互に組み合わせた数列である。
そして、もしざえが本当に天才ならば、これを見抜くはずだ。
「2132537411513……素数と自然数を交互に組み合わせた数列、ですよね……?」
彼女は少し戸惑ったようにして正解する。きっと、先週の配信と同じようなことになって私が更に炎上するのを懸念しているのだろう。
が、私は構わず続ける。
「12349627881!!」
「初項1公比3の等比数列と偶数を交互に組み合わせた数列です」
「7614122118!!!」
「7の倍数と6の倍数を交互に組み合わせた数列です!」
「163299316!!!!」
「2√6を3で割った無理数の各位!!」
「22549395!!!!!」
「えっと……√13にπをかけて各位に2を足して……」
全て、正解だ。
これは神業と言っても差し支えないほどだろう。だからこそ……注目はざえの頭脳に集まる。
少々強引なやり方だが……通じるか?
コメント
:これ全部合ってんの?
:異次元すぎるwww
:これほんとに人間技?w
:ざえAI説w
:最初のやつ確かめてみたら合ってたわ……
:えっっっぐwww
:でもこれって……
段々と、コメントの流れが変化していく。
:ざえが凄すぎる!!!
:ざえちゃんちと凄すぎね?w
:なんか前回と似てるな
:あられちゃん適当に数字言ってるだけだろwww
そう、私は適当に数字を言っているだけ、そう思い込ませるのだ。
:……これってもしかして、あられたんが頭良いとかそんなんじゃなくて、ざえが凄すぎるだけじゃない?
:なw俺もそう思うwww
:こんなん適当に数字言っても何かしら法則見つけてくれるんじゃね?www
:じゃああられ天才説は誤解?
:あられはガチで適当言ってたってこと?
適当でフィボナッチ数列言い当てるとかある? 現実的じゃなくない?
確かに、そこだけ見れば現実的では無い。が……
:でも多分何言っても、ざえちゃんなら何何数列! って言うんじゃない? 知らんけど
:あの時たまたまフィボナッチ数列だっただけだろむしろ
:どういうこと?
:有識者ぁー教えてー
:フィボナッチ数列を言い当てる確率は物凄く低いけど、何かの数列を言い当てる確率は100%
:あたりしか入ってないくじ引きみたいな感じで、狙いの景品が当たる確率は1%だけど、何かしらが当たる確率は100%ってこと
:あー
:分かるような分からないような?
そう! この展開を期待していた!!!
私の炎上騒動は、私が言った数字がフィボナッチ数列と重なったことで、"甘姫あられ頭良い説"と"ポンコツはヤラセ説"が浮上して炎上することになった。
だから、私がVTuberとして活動を続けていくには、今回の配信のこの炎上騒動を収める且つヤラセ説などなどを全て否定する必要があった。
だが、もう起こってしまったことに手を施し、"偶然"と理由付けするのはあまりにも無理がある。
ならば、逆転の発想!!!
私の超得意分野、"偶然"から"必然"への昇華!!
私がフィボナッチ数列を唱えた事実を"偶然"に出来ないのなら、それを"必然"にすればいい!
そこで思いついたのが今回の作戦だ。
フィボナッチ数列を口にした"私"ではなく、それを言い当てた"ざえ"に焦点を当てる。
ざえにはなるべく先週と同じように行動してもらいたかったので、素のまま望んで欲しかったのである。
長い協議の末、コメント欄は私がぽんこつでは無いという結論に至ってくれたようだった。
コメント
:なんか察したわw
:やっぱりあられが賢いわけ無かったんだ……!
:こんな事実知りたくなかった……w賢くあってくれよ、あられ……
:え? これもヤラセでは?
:【結論】あられが賢い→✕
ざえちゃんが賢い→○
:なんか……嬉しいのに複雑だよ、あられ……
無論、これで視聴者の全員が私のぽんこつを信じる訳では無いだろう。だが、活動を続行出来るくらいには、状況は回復したと見える。
「ざえちゃんすごいね。あられ、もう途中からなにがなんだか、じぶんでもわかんなかったよー」
「そう、ですね」
「でもこれで……ほんとにふほんいだけど……あられがありのままだってしょーめいできたねー!!! きゅーいーでぃー!!」
コメント
:ああ、証明出来たな、ぽんこつって
:ある意味悪魔の証明w
:悲しい証明だな……
:いっそ天才であれよ、あられw
そして、忘れてはいけない作業がもうひとつある。
「ざえちゃん、うちあわせのときに"あられさんは適当に数字言っといてください"って言ってたのって、こうなることぜんぶわかって言ってたのー?」
この作戦自体をざえ考案にしておかないと、私が勝手に数字連呼し出したヤバい奴になってしまうからだ。
しかしこれはざえに炎上騒動の責任を全て背負わせることになる。実際には私はファンを騙す悪役、彼女はそれを暴いた主役のはずなのだ。それが今度は立場が逆転することになる。
勿論、彼女を貶めることはこの計画のうちだが……それでも最後は、ざえが了承して口裏を合わせてくれないと、この騒動を丸くおさめることは出来ない。
頼む……話を合わせてくれよ……ざえ……!
「……はい。私の発言であられさんを大変な目に合わせてしまったので。あの配信の後に気づいたんです。あられさんが賢いのではなくて、私が天才なのだと」
「それじぶんで言う!?」
ふぅ……よしよし、いい子だ、ざえ。
これで私は奮ってぽんこつムーブが出来るという訳だ。
「ま、ごかいをとくのはもうちょっとあとでもよかったけどねー。みんなに頭良いってほめられてたしー」
コメント
:褒められてたわけじゃねえんだわwww
:草
:良い気分になってんじゃねえよwww
:それで一週間空けたのか?www
:あられって人生幸せそうだよね
:俺達の心配を返せ!!!!www
「あられさん、それは駄目です。本当は一刻も早く誤解を解いて、あられさんが馬鹿だと世間に伝えないと──」
「あられは馬鹿じゃないっ! ぽんこつなだけっ!!!」
コメント
:草
:恒例のやつw
:草
:草
:何はともあれ良かったよw
:ざえちゃん相変わらず辛辣w
:草
一時は本当にもう終わりだとさえ思ったし、別に無理してまで続ける必要性も無いと思った。
でも、いざ辞めるとなると心のどこかで何かつっかえてるような感じがして。
今思うと、私は辞める理由を探していたのだと思う。
でも。もしこれから、同じようなことやこれ以上の危機が起こったとしても、私は最後までもがき続けるだろう。
辞める理由は探すのに苦労したけれど。
続ける理由は、簡単に見つかった。
だって私は。
最っ高に楽しいから!!!
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第四十四話読了ありがとうございます!
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