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#40.体は軽く

 

 しゅるるるる


 久しぶりの学校から帰って来て真っ先に制服のリボンを外すと、所々にボタンを開けて自分好みの気楽な格好に仕上げる。


 早々にお風呂を済ましてしまおうかと考えるが、何か面倒に感じてとりあえずリビングのソファに腰掛ける。


 きうい姉に電話しろ、か……


 カチカチと針を揺らす時計を見ながら、チカの言葉が想起される。


 この時間なら……配信はしていないだろうか……


 いやしかし、きっと彼女に話したところで酔っ払いの戯言しか返ってこないだろう。第一、相談してどうにかなる問題でもないし、どうにかしたい問題でもない。でも……



 ……かけるだけかけてみるか。


 私はスマホのロックを解除すると、PCに入れてあるものと同一の通話アプリを起動する。

 スマホにダウンロードしてはいるものの、肝心の通話は一度もしたことが無い。顔も本当の名前も知らない相手にスマホで電話をかけるというのは、少し不思議な感覚だ。


 表示される"鬼透きうい"の文字を押すと、少し間を空けてから通話ボタンを押した。


 どうせ出ない……


 そんな、落胆を軽減させるために張った予防線とは裏腹に、呼出音を殆ど聞くことなく電話は繋がった。


「よっすーどうしたのあられちゃん?」


 あれ? 何だかいつもより綺麗な声だ。まるで私と初めてコラボした時のような、そんな感じがする。

 きうい"姉"の呼び名に珍しく当てはまった今日の彼女には、アルコールの雰囲気はあまり感じられなかった。


「え、えと……」


 まずい。まさかこんなに早く出てくれるとは思ってもいなかったので、何から切り出すか考えていなかった。


 そんな焦りが伝わったのか。彼女は少し優しげに言葉を電波に乗せる。


「あられちゃんとざえちゃんってさ。似てると思うんだー。その、天才とかぽんこつとか関係なく、ね」


 私に配慮しての言葉選びだろうか。


「でもあられちゃんとざえちゃんでここが違う、って言うのは、理性と感情のバランス。

 ざえちゃんは冷静沈着な天才! って感じで謳ってるけど、実際は感情に引っ張られすぎてるような感じがして。例えばー、過度に緊張したり、私につられて吐いちゃったり……時と場を考えずに自分の"興味"に任せて行動したり」


「この前の私への発言ですか?」


 彼女は少しだけ黙ってから、ん、とだけ答えた。


「それから、あられちゃんはその逆」


「逆、ですか?」


「うん。あられちゃんは理性が感情を支配しすぎてる気がする。何をするにも効率、最適、そして理由、動機、メリットデメリット……自分の行動に何かしらの理論を求める……違う?」


 今度は私が、ん、と答えた。


「まあつまり言いたいのはさ。二人ともそのバランスを考えたら、もっと上手くいくってこと。きっとざえちゃんも今頃それに気づいてる」


 ピコン、と通知音が鳴ったのでスマホを耳から離して見てみると、ざえからの新着メッセージが届いていた。


「あられちゃん。もっと自分に正直になってみても良いんじゃないかな? ありきたりで曖昧な言葉だけど、今の君にはこれが一番合ってると思う」


 自分に正直に……何かの宣伝、誰かの名言、世の中の至る所で見聞きした言葉だったが、きうい姉から発せられたその言葉は、今までで一番重みがある気がした。


「何だか……いつもよりずっとお姉さんですね。とてもアルコール中毒者とは思えない」


「それを言うならあられちゃんもー……いや、それは野暮ってもんかな〜」


 あははー、と気さくに笑う声を聞いて何故か少しほっとする。

 明らかに体が軽くなっているのを、実感出来る。

 いや、というよりは今までが予想以上に体が重くなっていたのだろうか。


 ……チカにも感謝しなくては。


 ヒントは沢山貰った。ここからは私が自分で考える番だ。

 きうい姉との通話を終えた私は、続いてざえからのメッセージを開いた。


***

第四十話読了ありがとうございます!


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