表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/188

#23.天才は仮面を外す

 

 ティロンティロン ティロンティロン


「ん?」


 PCから流れるこの少し変わった音楽は、配信者用のアカウント《甘姫 あられ》でログインしている通話アプリでの着信音だ。

 先程のきういとのコラボ配信も、この通話アプリで行っていた。という訳で相手は彼女だろう。


 ……ブチッ


 なんか色々と面倒になりそうだったので切ってみた。


 ……いや、今のはまずかったか。


 ティロンティロン ティロンティロン ガチャ


「もうー!! なんで1回切ったのー!?」


 彼女の怒号のような悲鳴のような声が部屋の中に響く。


「す、すみません! なんかいろいろとパニックになっちゃって!!」


 危ない危ない。やはり脳が限界状態のようだ。


 コメント

 :草

 :パニックで切るって何だよwww

 :気づいて駆けつけて来てくれたのか!

 :草

 :さすがきうい姉! やる時はやる女よ!!

 :あられちゃん相当疲れてそうだな

 :ゆっくり休めあられ


「今日はありがとねー! 応援してるからこれからも頑張ってにゃ〜。あ、それと──」


「またまたぁー、あられにはおせじは効きませんよー?」


 フッと、少しの間静寂ができた。ゴトゴト……と冷蔵庫の雑音が耳に入るくらいには静かになる。


「……いや、お世辞じゃないよ」


 少し、空気の変わった感じがして、私は半分無意識に背筋を伸ばす。


「本当に頑張って欲しいと思ってるんだー。私はよく勢いのある新人さんとコラボさせて貰ってるんだけどさ。いつも、新人さん達は私と話していることにどこか満足してるって感じがして」


 勿論自惚れてるわけじゃないよ、と彼女は慌てて付け足す。


「酔っぱらいの戯れ言だと思って聞いて欲しいんだけどさ。新人さんはね、私にとても丁寧に接してくれるんだ。きういさん、きういさんって。まるで夢でも叶ったみたいに」


 裏の顔なんてありそうにない、真っ直ぐで少し寂しそうな声色だ。


「それはそれで嬉しいんだけどさ。もっと……何だろう……目指すべきはそこじゃないよ……って、私とコラボするのが当たり前になるくらい……何だろ、言葉にするの難しいね。ちょっと話長いかな?」


 いいえ、とだけ伝える。


「巷では"新人潰し"なんて言われて。そりゃあ酷いこと書かれたりしたよ? それで、新人さんとコラボするのももうやめにしようかなって思ってた」


 チクリ、とだけ胸が痛む。


「でも……今日はあられちゃんと話せてとっっっても嬉しかったんだぁー! キミは、ぽんこつでおっちょこちょいで、突然踊り始めた時はほんとお腹が裂けるかと思ったけど……フブッ」


 コメント

 :いい話の途中に思い出し笑いやめてもろてw

 :これきうい姉も気づいてない説ある?

 :きうい姉キャラ崩壊だろw

 :アンチは何でもかんでも叩きたがるからな

 :あられの腕ぶんぶんは笑ったwww


「あられちゃんの声にはさ、情熱が乗ってるって思ったんだ。私、結構人の声とかに敏感だから、そういうの伝わるんだよ? あられちゃんは、私なんて眼中に無いって声してたなぁー」


「そ、そんなことないですよ!!!」


「ううん。これは良い意味だから。だからね、本気で応援してる。それに私も燃えてきちゃったしね、あられちゃんの声聞いてると!」


 私の中の鬼透 きういの印象がペリペリと剥がれ落ちて、新しく更新されていく。


「……思ったよりも良い人みたいですね」


「ちょっとー! 私のことどう思ってたのーー!」


 ブツブツと不満を漏らすきういの声を聴きながら、私は考える。何で私は顔も知らない相手なのに、こんなに話していて安心するのだろうか。

 この人とはずっと仲良くしていたい、なんて変なことを思ってしまうのだろうか。


 この欲望は、人気になるためのコネ作りなのだろうか。それとも、自分の本心から生まれてきたのだろうか。


 私はあの日から、無意識に人を拒絶しているはずなのに。突然ふと消えてしまいそうで、いなくなるなら初めからいない方がいい、と。心の奥底でそう思っている、そのはずなのに。


 私の私への分析もまた、ペリペリと剥がれ落ちていく。


 彼女になら、甘姫 あられの仮面を取って話したい、と思えた。


「きういさん、私実は──」


 現在の登録者数:133,105人(107人up⤴︎︎︎)


最近、しゅんとした話が多いような……

いや、甘姫あられは"成長コンテンツ"ですから!

これくらいはセーフ……?

***

第二十三話読了ありがとうございます!


・面白いっっっ!!

・はやく続き読みてぇぇぇ!!


と感じましたら、良ければブックマーク登録、感想、評価★★★★★よろしくお願いします!!

面白くなければ、★☆☆☆☆でも構いません!!


また、特にお気に入りのエピソードに《いいね》して頂けると、分析時や今後の方針を決める時にとても助かります!!


あなたの意見を聞かせてください!お願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ