#14.5.あの日と同じ時間で
少し暗いかも……でもちょっとしたアクセントとして楽しんで下さいませ。
夕暮れ時。
私は左手にあるコーヒーをすすりながら、記念配信の準備を進めていた。
「うぅ……寒……」
もう春だと言うのに、冷えたすきま風が窓から侵入して、私の体温を奪ってそそくさと去っていく。私はたまらず換気のために開けていた窓を閉める。
こうも寒いと、自然とあの日のことを思い出す。
小学二年生頃だっただろうか。冬の中でもとびきり寒い日、その日の夜に母が他界した。
不思議なもので、その日のことはあまり覚えていない。その日、母がどんな顔をしていたのかすら思い出せないのは、少し寂しい。
私はそれからずっと泣いていた気がする。それは、記憶上初めて流す涙だった。母がいなくなるという"現実"だけでなく、これからどうしようという将来の不安も大きかったはずだ。
数日は、朝の匂いがどうしようもなく憎らしかった。
父は私が幼い頃に既に亡くなっていたので、それからは叔父達のお世話になることになった。
私は昔から賢かったから、叔父にも沢山褒められたのを覚えている。
そこからは友達よりも勉強を優先したからか、中学校には気の合う人なんて出来ずに。
だから、私の学校生活は、(気が合わないのに何故か関わってきてくれる)チカと話したこと以外に殆ど思い出はない。
もしかしたら、私は殻に閉じこもっているのかもしれない。
いや、きっとそうだ。私はきっと、母がいなくなってからずっと、何かに怯えている。
それが何か。私は知っている。
カチ カチカチ
これでサムネイル作成は完了、っと。
配信は……21時からにしよう。
あの日と同じ時間で。




