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#2.ミュート芸は起爆剤となる

 

 ミュート芸。

 ミュート芸とは、配信を始める時や離席後の場面、ミュート設定をオフにすることを忘れて話し始めてしまうことで、声が配信に乗らず、ただ独りでに口をパクパクさせる、という滑稽な姿を無様に晒してしまう行為を指した言葉である。


 数多く存在するVTuberのほとんどはこれを経験する、と断言して良いほど頻発するかつ配信が盛り上がる一種の起爆剤と言えよう。


 だが、私は考える。

 このミュート芸はあくまで"ミス"。偶発的に起こるものであり、個人情報流出などのリスクがある一種の放送事故(ハプニング)

 ミュート芸をしたくてする者などいない……。




 ──否っ!!!!


 私は考える! もしこの"ミス"を"ミスしている風"に書き換えたとすれば!

 個人情報流出? 恥ずかしい? 有り得ない、なぜならそれらは全て想定されているものなのだから!


 "偶然"から"必然"への昇華!

 これはつまり、ミュート芸という本来いつ爆発するか分からない爆弾を、配信を盛り上げる起爆剤として早変わりさせる!


 事実、これを行っているVTuberも少なくはないことだろう(私調べ)。彼彼女らは気づいているのだ。この昇華の方程式に。


 私はPCに写る配信待機画面のコメント欄を見る。


 同接35人……一見少なく見えるが、無名配信者の初配信なんて同接0人が当たり前、ならばこれだけの人数が最初に集まったのはひとまず好調と言って良いだろう。


 私はすーっと息を整えると、画面とBGMの切り替えを素早く済ませ、右手側にコメント欄をセット。甘姫あられを画面に出現させる。


 コメント

 :おっ

 :始まった!

 :きちゃあ!!!

 :仕草可愛い〜

 :きたぁぁぁああああ!!!!!

 :ドキドキ!


 変に思われない程度に首を左右前後、目をパチパチ、口をパクパク……よし、動作は正常。

 そして、左下に見えるミュート解除ボタンは"あえて"触らない。


「あ、あー……きこえますかー?」


 コメント

 :ん?

 :顔がいい!!

 :かわいいー!

 :推し確定ぞよ!!

 :ん?

 :音は?

 :音ない?

 :BGMだけ?


「やっとやっとの初配信! 緊張するぅ……」


 コメント

 :音ないかも

 :音量小さい?

 :聞こえないよー!!

 :声聞こえない

 :ミュート?

 :ミュート芸かーー!!

 :これミュート?w

 :ミュートきちゃああああーーーー!!


 うむうむ、いい感じに盛り上がってきた。

 しかし想定より気づくのが早い。さすがこんな底辺配信にも顔を出すほどの精鋭。きっと数々の配信を渡り歩いてきたのだろう。


「あれ? みんな、きこえてる?」


 と言いつつミュートに気づいた感じの表情をする。ミュート芸は短すぎても長すぎても駄目、視聴者の反応を伺いながら上手く対応していかねばならない。


 コメント

 :ミュートだよーー!!

 :あ、気づいた?

 :気づいたかw

 :草

 :草

 :初配信でミュートかよw

 :初配信ミュート芸はもはやテンプレ

 :もしやドジっ子?

 :草

 :草


 そろそろ頃合いかな……ミュート解除!


「あ、あわわわ……! 間違えてミュートしちゃいまししゃしゅ!」


 コメント

 :噛んだwww

 :声可愛いいいいーーー!!

 :しゃしゅ

 :ししゃしゆ

 :ミュートからの噛みはもはや王道


 計算され尽くして作られたこの萌え声を駆使し、あくまで"噛んだ"ような振る舞いを行う。


 そして……


「うわわごめんなさい!!! えっとえっと、こんあられー! きょうデビューした甘姫あられで……うわあ──ドンガラガッシャーーーーン!!!!!」


 コメント

 :こんあられー

 :大丈夫!?w

 :落ち着けw

 :ドジっ子にも程があるだろ!!!!www

 :草

 :草

 :ミュートからの噛みからの大コケは……むしろ……安定……!

 :これ神回だろ


 初配信とは、自分が何者であるかを視聴者に伝える場。甘姫あられの場合、"ぽんこつ"であることをいち早く伝えねばならない。

 ならば、初配信で"ぽんこつ"するべきなのだ。


 だが、1人強情な視聴者がいるようだ。

 もちろんそんな場面も想定済み。頑固者も含め、視聴者達はこれで甘姫あられの沼に沈むことになる。


「み、みんな……ごめんなさい……あられ、いつもミスしてばっかで、きょうはだいじな日だから、ぜったいミスしちゃいけない!……って思ってたのに、さいしょからこんなにも……」


 少し落ち込んだ、ような声を出す。


「でも、これから精一杯がんばりたいと思ってるので、おうえんよろしくお願いしましゅっ! いてっ」


 コメント

 :可愛い……

 :かわいいー!

 :尊い……

 :応援するよー!!

 :かわよ……

 :こちらこそよろしくー!!!

 :かわいすぎるよお!!!


 画面に精一杯近づいての上目遣い。開始数分での数多のぽんこつからの突然のキュン。それはまるで、小動物を撫でた時に感じるような……圧倒的母性本能!! 幼くてぽんこつで危なっかしくて、可愛い……この娘の笑顔を守りたい!

 そう思わせることで、視聴者の胸を鷲掴みにするのだ。


 こんな調子で30分間のぽんこつ&キュン詰め込み配信をやり終え、無事配信を終了した──



 ──はずがなかった!!!


***

第二話読了ありがとうございます!


・面白いっっっ!!

・はやく続き読みてぇぇぇ!!


と感じましたら、良ければブックマーク登録、感想、評価★★★★★よろしくお願いします!!

面白くなければ、★☆☆☆☆でも構いません!!


あなたの意見を聞かせてください!お願いします!!

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