#170.一人の伝説が過去になる
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8月27日 21時。
タイトル
【大事なご報告】今後の活動につきまして [ライバース/星乃 ルナ]
コメント
:嘘だよな……?
:泣
:……とりあえず理由を聞きたい
:待て、まだ卒業とは決まってない
:俺は信じない
:泣泣泣
:まじで精神ヤバい
:真っ暗
女の子の部屋というには少し質素で、男の子の部屋というには綺麗に整頓され過ぎている、まさに私の中途半端な性格を表したような部屋で、私は一人ステンレス製の水筒を手に取って浄水を摂取する。
配信前はコーヒーを飲んではいけない。喉から水分がなくなってパサつくからである。
ふと壁に順に貼ってある各周年記念のポスターに目を向ける。
ライバース創設からここまで、私はノンストップで必死に活動を続けてきた。
初めの数ヶ月なんて虚しいほどに鳴かず飛ばずで、どうすれば皆に知ってもらえるかを四六時中考え続けた日々だった。
VTuberは可愛くなくてはならない。
これは当時では常識であり鉄則であった。まだVTuberがそこまで注目を浴びておらず、コアなファン達でヒソヒソと執り行う秘密の界隈だった当時。
当時は女性VTuberが殆どで、その全員がもれなく可愛かった。見た目も、声も、行動も。
でも私はそれには属さない、少し低めの声で。
最初は可愛く作った声を録音したり等して練習していたが、ふと吹っ切れてクール路線で行こうと決意したのは、今考えると間違いではなかったようだ。
当然、デビュー当初は批判の声もあったし、そんな特徴的な声でもないから『普通な女の子って感じだな』とコメントで言われた時は、かなり心に来た。
でも、それでもVTuberになりたいのだという野望を心に抱いて必死に活動を続けた理由は、私も画面の中に憧れた一人だったからだ。
VTuber事務所をしたら儲かる! とか、今この業界が熱い! とかそういうのではなくて……根本は、私も他の人と何ら変わらない、画面の中でこれでもかというほどに輝くVTuber達に抱いた憧れだった。
私は何度か深呼吸すると、年季の入った愛用マウスを動かして要所をカチカチとクリックする。すると、会社のロゴを含んだ画面転換が挿入され、モニターに私の電脳姿が映し出される。
「こんるなー。皆、今日は集まってくれてどうもありがとう」
コメント
:こんるな!
:こんるな
:辞めんのか……?
:こんるな……
:まず話聞けって
いつもと少しテンションの違うコメント達に、心がチクリと痛む。
「それじゃあ……長引かせてもアレですし、早速大切なご報告をさせてもらいます」
コメント
:……
:やめてくれ
:泣
:まじ
:俺は受け入れる覚悟だぞ
:敬語やだ
:泣
息を吸って、言葉にして吐き出そうとするが、音が抜けて空気が漏れ出してしまい、また吸いこむ……というよく分からない過程を何度か繰り返してしまう。
そしてそれを繰り返す度に、鼓動が嫌に速くなっていくのが感じられて、一度立て直そうと唾を飲み込んだ。
「私、ライバース一期生 星乃 ルナは」
コメント
:まて
:うわ
:この話やめようぜ?
:泣
:聞きたくないガチで
:やめてくれ
:ちゃんと聞く
「……2024年8月28日をもちまして、ライバースを卒業致します」
コメント
:うわぁ泣
:卒業じゃねぇか
:今までありがとう
:泣泣泣
:鬱すぎる……
:嘘だと言ってくれ
:あのライブ見た後だから何も言わない、これからももっと見たかったのは確かだけど……
:テッテレーは?
「……えぇと、そう思っていたのですが……」
コメント
:……え!?
:まじ!?
:は!?!?
:え!
:なに……???
:ここから復活ルートあんの!?
:マジか!?!?
***
第百七十話読了ありがとうございます!
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